忙しいオフィスで起こりがちなPCの入力ミスやボタンの押し間違い、メールの誤送信といった「うっかりミス」。ひとたび起これば、処理をやり直す手間がかさみ、さらに慌ただしくなる。現場の担当者に強いストレスがかかって離職したり、残ったスタッフの負担が増したりする事態を招きかねない。

 どうすればうっかりミスをなくせるのか。今回紹介するのは、2016年4月以降、数字の入力ミスが致命傷になりかねない決算処理業務で、うっかりミスの撲滅に乗り出している日本ジェンパクト・ビジネスサービスだ。同社は、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を手掛けるGenpact Japanの子会社で、日立製作所グループの財務関連業務を請け負う。データの入力ミスは即、日立グループの財務処理に悪影響を及ぼす。

 親会社の米Genpactは1997年、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の間接部門業務を担う子会社として発足した。2005年にGEグループから独立したものの、発足当初から親会社のGenpactが進めてきた「リーンシックスシグマ」という改善手法を使ったプロセス改革を現場に適用。成果を上げてきた。

引き継いだ決算業務でミス半減

 特に成果を出しているのが決算業務部だ。同部は2015年以降、日立グループの会計システムを使った、月次や年次、四半期ごとに行う決算処理業務を担ってきた。

うっかりミス撲滅を進めるGenpact Japanと日本ジェンパクト・ビジネスサービスのメンバー。決算業務のうっかりミス撲滅は、日本ジェンパクト・ビジネスサービスの金善姫決算業務部部長代理(右から2人目)と、社長付の恩田拓氏(同3人目)が取り組んだ
うっかりミス撲滅を進めるGenpact Japanと日本ジェンパクト・ビジネスサービスのメンバー。決算業務のうっかりミス撲滅は、日本ジェンパクト・ビジネスサービスの金善姫決算業務部部長代理(右から2人目)と、社長付の恩田拓氏(同3人目)が取り組んだ
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 50人のメンバーから成る決算業務部が担当するのは、日立グループのうち65社の決算処理業務。会計システムを使った1社当たりの業務処理は、未収入金や未払い費用など110種類に上る。延べで7000種類以上の業務をこなしている計算になる。

 決算業務部は2015年に日立グループから、これらの業務を引き継いだ。その際、業務プロセスを見える化したうえで、個々の作業について要領書を作成。その書類に沿って決算処理を進めている。

 しかし、多様な業務のうち、月次処理は10日ほど、四半期や年次の処理は20日程度の短期間で済ませる必要があり、常に余裕がない。その結果、「決算業務を引き継いだ初年度の2015年は、数字の入力誤りなどうっかりミスが多発した」と日本ジェンパクト・ビジネスサービスの金善姫決算業務部部長代理は反省する。

 うっかりミスが起きると、作業をやり直したり、再発防止策を講じて顧客企業の担当者に説明したりする必要が出てくる。処理が集中する期間は、現場担当者の残業も増えがちになっていた。

 そこで2016年4月、日本ジェンパクト・ビジネスサービスはデータ入力などうっかりミス撲滅のため、プロジェクトを立ち上げた。すると「うっかりミスを半減できた」と金部長代理は胸を張る。「チェックリストによる確認作業が現場に定着したことで、うっかりミスによる作業の手戻りを減らせた。ピーク時に必ず起きていた残業を削減する成果も出ている」と金部長代理は続ける。

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