どんな企業も、売り上げを伸ばし収益を拡大するために、さまざまな取り組みをしている。その取り組みは、自社が扱っている製品やサービス、営業戦略などに応じて変わってくる。

 ここで企業が、ターゲットとなる顧客を見定めてABM(アカウントベースドマーケティング)を導入・実践したとしても、有効に機能する場合とそうでない場合が見えている。今回は、ABMを有効に機能させるための企業の取り組みを考えながら、MA(マーケティングオートメーション)やCRM(顧客関係管理システム)などデジタルツールの活用を解説する。

なぜABM実行のためにMAとCRMが必要なのか

 本連載では前回まで論じてきたように、ABMを「営業とマーケティングが有機的に結合し、ターゲットなる企業群から自社の成長に寄与するような売り上げを上げていく、マーケティングの仕組み」と定義している。

 その場合、ABMが有効な市場セグメントは、アンゾフの成長マトリックスでいうところの、「市場浸透=既存の市場×既存の製品」か「市場開拓=新規の市場×既存の製品」となる。その中でも、特に「市場浸透=既存の市場×既存の製品」の側面でABMは最も効果を発揮する。

アンゾフの成長マトリクス
アンゾフの成長マトリクス
イゴール・アンゾフ氏の「Strategies for diversification」(Harvard business review 1957年)のp.114ページの図(Product-market strategies for business growth alternatives)を基にマーケットワン・ジャパンが作成
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 ABMを効果的に機能させるためには、精緻にターゲティングした企業群に向けて、営業部門とインサイドセールス部門(同部門は企業によっては営業部門やマーケティング部門内に属する場合がある)やマーケティング部門の緊密な連携により、「(自社としても)組織的」に、「ターゲット企業を組織として」攻略する取り組みが必要とされる。

 では、自社が「精緻なターゲティング」を実行可能で、ターゲット企業を「組織的に攻略可能」な市場セグメントはどこだろう。先ほども書いたように、既存の市場に既存の製品を拡販する「市場浸透セグメント」となるだろう。

 一方で、「新規の市場×既存の製品」の「市場開拓セグメント」にもABMは適用可能である。ただし新規市場に対して「精緻なターゲティング」がどこまで可能だろうか。そしてそもそも「勝ちパターン」や「案件化、成約の経験」が不足する新規市場に、営業とマーケティングが組織的にアプローチをして、どれだけの勝算が見込めるだろうか。

 ABMは、営業が既に攻略した企業とタイプの似た企業をターゲティングし、営業単独で進めてきた営業プロセスを、インサイドセールスやマーケティングと協業することを基本とする。この結果、より多くのターゲット企業にアプローチし、効率的なターゲット企業の攻略を目指していく。

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