前回までのコラムで、ABM(アカウントベースドマーケティング)とは企業が「攻略すべき企業群(アカウント)」をターゲティングし、その企業群に対し「組織として」アプローチし、その企業群からの「売り上げを最大化する」ためのマーケティングの手法であることを説明した。

 ここでポイントとなるのは、「組織として」アプローチするということ。これは、今回のテーマとも関係するので、念頭に置いてほしい。

 今回のテーマは、企業が新規顧客を開拓する、あるいは製品・サービスの売り上げを伸ばすときに、営業社員が個人の主観を基に選定した「営業が行きたい企業」と、企業が組織として「攻略すべき企業」のどちらを狙うべきかである。

 答えは明確だ。組織としてアプローチし「攻略すべき企業」からの売り上げを最大化するのがABMであり、組織として「攻略すべき企業」を狙うべきである。

 それでは、営業社員が「行きたい企業」をターゲットとすることは、なぜ間違いといえるのだろうか。今回はABMの視点からそのポイントを解説する。

「営業が行きたい企業」を狙うことの「落とし穴」

 企業が新規顧客開拓に取り組むとき、営業社員が真っ先に向かうのが「以前から攻めたいと狙っていた企業」になるケースはよくある。マーケティングの業界では、営業活動はよく「狩猟」に例えられるが、そんな「ハンターのような」営業社員に自由度を高めて営業活動をさせることで、新規顧客開拓に成功している企業も多いだろう。そう考えると、「営業が行きたい企業」を狙うことの何が問題なのだろうか。

 営業社員が自由に動き回ることで業績を伸ばしている企業では、こんなことがあるかもしれない。マーケティング部門が様々な手法でリード(見込み客リスト)を獲得して、営業部門に渡したのに、「このリード、狙っている企業じゃないから」と一蹴されてしまう――。

 こうならないため企業の中には、営業社員から「攻めたい企業一覧」を書き出してもらい、その企業群へのインサイドセールスをマーケティング部門が担当するケースもある。新規顧客開拓や売上増の達成に向け、営業社員が「行きたい企業」に攻められるようにして、そのモチベーションを維持する狙いもある。

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