前回は、企業にとって自社のプロダクトを販売できる相手先、つまりターゲットとなる企業群は無限ではないことを説明した。そしてABM(アカウントベースドマーケティング)の実践では、限られた企業群を「by name(実企業名)」で絞り込めるかどうかが重要であることにも触れた。要するにターゲティングが大切ということだ。

 ただし、ここで忘れてならないことがある。そもそもABMでいうターゲット企業群とは、「営業が行くことができる企業」でも「営業が行きたいと思っている企業」でもない。売り上げのインパクトを考慮して、経営判断で「行くべき」と決めた企業群である。

 この大前提を念頭に置いておかないと、「営業が行ける企業」や「行きたい企業」を「by name(実企業名)」で絞り込むだけで「ターゲティングできた」となってしまいかねない。実際、こういったターゲティングをしている企業は多い。

 さて、by nameで企業群を絞り込むには、自社の主戦場をどう定義するかがポイントになる。「売り上げが〇〇万円以上」、「〇〇に関連する事業を展開していて」、「従業員が〇〇人以上」、「関東に本社がある」といった条件で自社の主戦場を定義していく。

 つまり売上規模や業種・業態、従業員数、エリアなどの条件から自社の主戦場を設定し、そこに当てはまる企業群をby nameで絞り込む。こうすることが、ABMにおけるターゲティングの基本的な考え方である。

 具体的な方法の一例を示そう。過去3年間の自社の売り上げから、「トップ50」の顧客企業を調べ、業種・業態、従業員数、本社所在地(エリア)などを分析する。

 そして、それらの条件をもとに「トップ50の優良顧客に似ている企業群」を調べてターゲット企業群にノミネートしていけばよい。営業個人ではなく「自社として攻めていかなくてはならないターゲット企業群」のリストを作り、そこを狙っていくということだ。

ターゲティングでは「粒度の細かさ」を意識することが大切

 ただし、これはあくまでもターゲティングの基本的な考え方にすぎない。しかも、上記のターゲティングは主に、自社にとって「未開拓の顧客」にアプローチするとき、いわゆる「ホワイトスペースを埋める」ときに有効な手法といえる。実際には、企業にとってターゲットとなる企業群が無限でないことを考えると、「未開拓の顧客」はそれほど多くはないはずだ。

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