今回は、これまでのおさらいを含めながら、ABM(アカウントベースドマーケティング)を実践するに当たってのITシステムの役割とその重要性を解説する。
ABMを実践するシステムとしてまず思い浮かぶのはMA(マーケティングオートメーション)ツールだろう。ではMAツールを使うと何ができるのか。もちろんこれだけでABMを実践できるわけではないことは、前回のコラムでも触れた。
MAツール活用で効果があるのはどのような場面なのか
ABMの定義をやや乱暴に言い切るなら、「これまでは営業担当者や営業部門が単独で進めていた営業活動を、マーケティング部門と共同でITを活用して進めること」となるだろう。
従来の営業活動は現場の「勘」と「経験」に基づいてターゲットを決め、ターゲットのうち接触したことがある相手にアポイントを取り、最終的に売り上げに結びつけるものだった。これに対して最新のABMはWebなどを活用することで、非対面でも顧客の動向を把握し、ニーズに合わせた情報をタイムリーに提供できるように変えていく。
そのためにITの活用=「デジタルトランスフォーメーション」をして、営業とマーケティング活動の職務分掌や役割を変更して、「営業部門とマーケティング部門の協業体制の再構築」=「マーケティングトランスフォーメーション」を実現していく。
かつては売り上げに結びつくターゲットやコンタクトの情報は、営業担当者の「頭の中」にあることがほとんどだった。さらにマーケティング部門だけが管理していた情報やマーケティング担当者が頭の中にしまっていた情報もあった。
MAツールを活用する企業には、これらの情報を一つに集約でき、一元的かつ体系的に管理できるという期待があるようだ。例えば自社のホームページにアクセスしてきた見込み客が製品やサービスのホワイトペーパーをダウンロードしたなどのデジタルでの「振る舞い」(「デジタルボディランゲージ」とも呼ぶ)を共有していく。