PCの外部インタフェースとして普及したUSBは、信号の送受信と同時に電源を供給する役割がある。給電側と受電側が折衝し、適切な電力を供給する。ところがUSB Type-Cケーブルによっては、機器の破損につながりかねない挙動を示すという「謎」が存在する。
その背景には、互換性を維持しつつ電源供給に関する仕様を拡張してきたことによる、USB仕様群の複雑化がある。
まず、USBの電源供給に関する仕様を整理しながら見ていこう。USBを電源として利用する機器が増える中で、USB標準化団体のUSB-IFではUSBのデータ転送に関する仕様とは別に、充電や給電に関する仕様を策定してきた。バッテリー充電に関する「USB Battery Charging(USB BC)」、給電に関する「USB Power Delivery(USB PD)」だ。
仕様名 | 電圧 | 電流 | 最大電力 |
---|---|---|---|
USB 2.0 | 5V | 0.5A | 2.5W |
USB 3.1 | 5V | 0.9A | 4.5W |
USB Type-C Current@1.5A | 5V | 1.5A | 7.5W |
USB Type-C Current@3.0A | 5V | 3.0A | 15W |
USB Battery Charging(USB BC) 1.2 | 5V | 1.5A | 7.5W |
USB Power Delivery(USB PD) 3.0 | 5V~20V | 3.0A~5.0A | 100W |
これに加えて、向きを意識せずに使えるコネクタ仕様の「USB Type-C」の仕様がある。USB Type-Cコネクタでは、1ポート当たりの電流値がUSB 2.0の500mAやUSB 3.xの900mAよりも引き上げられている。仕様上は、1.5Aまたは3.0Aを供給可能だ。
実際に給電する電力は、給電側、受電側のUSB機器とのやり取り(ネゴシエーション)や、ケーブルの認証チップ「E-Marker」の有無、および機器判別用の抵抗値で決まる。例えばUSB PDであれば、USB機器やハブなどのデバイスコントローラー、USB Type-Cコントローラーなどが同仕様に準拠したネゴシエーションを実施して流す電力を決める。
USB Type-CケーブルにE-Markerが載っていない場合、給電側はUSB 2.0/3.1の基本仕様に基づいた電圧/電流を提供する。USBに限った話ではないが、想定外の電力は流さない。USB 2.0準拠の機器では、USB 2.0の仕様の範囲で最大2.5Wを給電する。USB 3.1なら4.5Wだ。