富士通クラウドテクノロジーズによるソリューション講演には、同社の大畑寿夫氏が登壇。業務サーバーをオンプレミス環境からクラウド(VMwareベースのニフティクラウド)へ移行する際のノウハウを解説した。同社は2017年4月にニフティから分離した会社で、ニフティクラウドを含む企業向けサービスを提供している。

富士通クラウドテクノロジーズ SRE本部 インフラサービス部 課長 大畑寿夫 氏
富士通クラウドテクノロジーズ SRE本部 インフラサービス部 課長 大畑寿夫 氏
撮影:海老名 進

 ニフティクラウドの特徴は、オンプレミスのプライベートクラウド環境と同様に、米VMwareのサーバー仮想化ソフトをベースとしていること。ニフティ自身が2006年からVMware製品を社内で運用しており、この知見を生かして2010年にIaaSクラウドサービス事業を開始した経緯がある。

 同社自身も業務サーバーをクラウドに移行済み。マシン室を廃し、全サーバーをクラウドに移行した。約300台あった物理サーバーのうち、利用を継続する約100台について、担当者にヒアリングし、クラウド上に再構築。再構築できない30台については、P2C(物理サーバーをクラウドに移行)型で移行した。

 同社が実施したP2Cの作業は3ステップから成る。まず、対象サーバーのOSやディスク環境がクラウドや仮想環境に持ち込めるかどうかを確認。次に、オンプレミスのVMware仮想環境を使ってサーバーを仮想イメージへと変換。最後に、作成済みの仮想サーバー(VM)のイメージファイルをクラウド環境にインポートした。

P2Vで動作確認してからクラウドにインポート

 VMをニフティクラウドにインポートする方法は2つある。1つはネットワーク経由で転送するやり方。難点は、ネットワークに負荷がかかり、移行がいつ終わるのか分からないこと。もう1つの方法は、USB接続の物理ストレージを介してデータをコピーするやり方である。ローカルでコピーするだけなので移行時間の予測が立てやすい。

 大畑氏は、物理ストレージを介してデータを移行した2つの事例を紹介した。開発環境として40VMを移行したIT企業の場合、時間に余裕があるVMについてはネットワーク経由で、時間に余裕のないVMは物理ストレージで移行した。100VM(容量は1Tバイト)を移行した情報メディア企業の場合、使っていたネットワーク回線では十分な帯域を確保できなかったので、すべてディスク経由で移行した。

 大畑氏は、VMインポート時の注意点をいくつか挙げた。まず、ディスクのデバイスドライバの問題で、P2V(物理サーバーを仮想サーバーに変換)を実施した後にディスクを認識できずに起動しないという問題が生じやすい。P2Vで発生する問題の8~9割はこの問題だという。

 ここで重要なのは、いきなりP2Cでクラウドに移行するのではなく、まずはP2Vで仮想化することだという。いったん仮想環境で動きさえすれば、クラウドへの移行は簡単だからだ。一方、VMイメージをクラウドにインポートする時によくある失敗は、DHCP設定が漏れていてIPアドレスが取得できないことだという。

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