米マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」が好調だ。2017年1~3月期の売上高成長率は前年同期比93%で、その伸び率は「Amazon Web Services(AWS)」を上回る。成長の原動力はマイクロソフトのパートナー施策だ。その姿勢は競合と好対照をなしている。

 「パートナーファースト」――。マイクロソフトが2017年7月10日から13日まで米ワシントンDCで開催したパートナーカンファレンス「Microsoft Inspire」の基調講演で、同社の法人営業を統括するエグゼクティブ・バイス・プレジデントのジャドソン・アルソフ氏は、同社の姿勢をそう表現した(写真1)。

写真1●「Microsoft Inspire」で講演する米マイクロソフトのジャドソン・アルソフ氏
写真1●「Microsoft Inspire」で講演する米マイクロソフトのジャドソン・アルソフ氏
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 パートナーファーストとは文字通り、マイクロソフトが同社の製品やクラウドサービスを販売するパートナー企業を最優先しているという意味だ。顧客を最優先する「カスタマーファースト」を掲げる企業も多いご時世の中で、パートナーカンファレンスとは言え報道陣にも公開している場でパートナー最優先を明言するマイクロソフトの姿勢は異彩を放っている。

 しかしそうしたパートナー重視の姿勢が、同社のクラウド事業の好調さを支えているのも事実だ。マイクロソフトによれば同社のクラウドサービスを販売するパートナーの数は6万4000社で、この数はAWSと米グーグル、米セールスフォース・ドットコムという競合3社が擁するクラウドパートナーを合算した数を上回るという。マイクロソフトの強みは、その強固な販売力なのだ。

Azureに割引制度が無い理由

 Microsoft Azureにおける「パートナーファースト」の姿勢を最もよく示すのが、料金を割り引く仕組みだ。Microsoft Azureには、AWSや「Google Cloud Platform」にあるような、クラウド事業者が直接顧客に提供する割引制度が存在しないのだ。

 例えばAWSは、1年または3年単位で一定量のコンピュータ資源を利用する予約金を支払うことでその間の料金を最大75%割り引く「リザーブドインスタンス」という制度を用意している。Google Cloud Platformには、月当たりの仮想マシン使用時間が一定以上に達した場合にその後の料金を最大30%割り引く「継続利用割引」という制度がある。

 実はMicrosoft Azureにも以前は、利用料金を事前に支払うと割引きが受けられる「プリペイド型」の支払いプランがあった。しかしプリペイド型で購入した利用権は、6カ月や12カ月といった期限が切れると利用できなくなってしまうため、顧客には不評だった。そのため現在は、プリペイド型の新規契約を停止している。

 現在、ユーザー企業がMicrosoft Azureで割引きを受けようとするなら、マイクロソフトとの直接契約でMicrosoft Azureを利用するのではなく、「クラウドソリューションプロバイダー(CSP)」などと呼ばれる販売パートナー経由で利用する必要がある。しかもその割引き内容は販売パートナーによって大きく異なる。

Azureの販売助成金総額は年額1000億円超

 販売パートナーが割引きの原資としているのは、販売パートナーがMicrosoft Azureを仕入れた「卸値」と顧客に販売した「売価」の差額と、顧客によるMicrosoft Azureの利用量(コンサンプション)に応じてマイクロソフトが販売パートナーに対して支払う販売助成金(コンペンセーション)である。Microsoft Inspireでの発表によれば、マイクロソフトは2016年、4500社のパートナーがMicrosoft Azureを間接販売した60億ドル(約6800億円)に対して、10億ドル(約1100億円)のコンペンセーションを支払ったとしている。

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