eコマースを取り巻く環境が年々進化している。

 数年後のeコマースを想像してみよう。音声検索がメーンの検索方法となり、他の消費者に大きな影響を与える「インフルエンサー」が持つSNSアカウントからのサイト流入が増え、チャットで消費者と店員が「会話」をして、商品紹介には動画が多用され(もしかしたら数十秒見たときに「購入」ボタンが画面に表示されているかもしれない)、ドライブ中に車の位置情報が連動して近くのスーパー、レストラン、店舗などのクーポンやお買い得情報がカーナビに表示され、Instagramの「Shop Now」タグボタンからECサイトにシームレスに連携し商品を購入できる――。

 こんなことが当たり前になっているだろう。ここに挙げたのは現時点で実現性が高いといえる未来だが、実はeコマースの現在を基に数年先の未来を予測することは容易ではない。

 過去10年間の出来事を振り返ってみよう。eコマースとその周辺分野には、今日でこそユーザーにとって当たり前のユーザーエクスペリエンスとなったが、ここまでの変化があるとは想像できなかったものが数多くある。

 例えば、スマートフォン。2007年の米国での、2008年の日本でのiPhoneの発売などが契機となり、いつでもどこでも手軽にインターネットを利用できる環境が整った。総務省の調査によると、現在では6割近く のユーザーがiPhoneをはじめとするスマートフォンを保有しているという。

 スマートフォンの普及は、ECサイトの利用時間帯や、販売チャネルの拡大、プロモーションやリテンション方法に変化をもたらした。ECサイトの利用時間帯のそれまでのピークは、利用者が自宅に帰ってから寝るまでの夜の時間が中心だった。これが通勤時間帯やお昼の休憩時間などにも分散した。

 スマートフォンにはユーザー自身が使いたいアプリを選んでインストールする仕組みも整備されている。そのためのアプリマーケットを、スマートフォンのOSを提供する企業や通信事業者などが用意することも常識になっている。この環境を活用して、企業は各種サービスや自社のブランドを高めるアプリを提供している。その中にはeコマースが可能なアプリもある。

 eコマースアプリでは買い物が簡単にできるほか、実店舗とECサイトで共通して使えるポイントカード機能や、近くに店舗がある場合に店舗案内やクーポンなどを通知するPush配信機能などが実装されている。

 ただ、こうした未来をiPhone発売前の10年前に予測できていただろうか。これに近いアイデアはあったかもしれないが、実用イメージまでを描けていたかどうかについては疑わしい。

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