90種を超えるクラウドサービスを展開する米アマゾンウェブサービス(AWS)。その拡販を支えるのは、高度に組織化したパートナー制度だ。「AWS パートナーネットワーク (APN)」のもと、SIベンダーを中心とする「APN コンサルティングパートナー」には日本でも150社あまりが名を連ねる。様々なサービスを駆使し、ユーザー企業にソリューションを提供するパートナーが今、AWSによる“民業圧迫”の影におびやかされている。

 AWSは「ユーザーが望むサービスの提供」を第一に掲げる。矢継ぎ早に投入される新サービス、新機能には、パートナーの事業領域に踏み込むものも増えてきた。元々がIT企業ではないAWSは、ITベンダーの既得権益を忖度(そんたく)することなく、イノベーションを加速してくる。

 AWSは自らとユーザーで完結する世界を最終目標に見据える。が、現状は2者で完結しないので、SIベンダーの出る幕がある。AWSが目標に向けて邁進するほど、ついていけなくなるパートナーが増えるという構図。そうしたパートナーがAWSと距離を置き、Microsoft AzureやGoogle Cloud Platform(GCP)などに接近するシナリオは十分にあり得る。

 イノベーションを止めるわけにはいかないAWS。「全てはユーザーのため」という錦の御旗の裏側に死角が潜んでいる。

AWS純正ツールが続々

 イノベーションの直撃を受けるのは、独立系ソフトウエアベンダー(ISV)など、AWS上でソリューションを提供する「APN テクノロジーパートナー」だ。あるSIベンダーのAWS担当者は「QuickSightが進化してきたら既存のBIツールはどうなるのか」と疑念を抱く。

 2016年11月に一般提供が開始された「Amazon QuickSight」は、AWSが提供するBIサービスだ。2015年に発表された際、QlikViewやTableauといったパートナーのBIツールと競合するサービスの登場に注目が集まった。

「AWS re:Invent 2015」で発表されたBIサービス「Amazon QuickSight」
「AWS re:Invent 2015」で発表されたBIサービス「Amazon QuickSight」
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 QuickSightは「SPICE」と呼ぶインメモリーのカラム型ストレージエンジンを搭載。S3やRedshift、AuroraといったAWSのストレージやデータベースなどをデータソースにして、Webベースのツールで可視化したり分析したりできる。AWSは「パートナーのツールもSPICEと組み合わせて使える」と説明するが、QuickSightが「AWS最適のBIツール」の座を狙うのは自然な流れだ。

 ライバルのMicrosoft AzureやGoogle Cloud Platform(GCP)と横並びで機能比較された際に、AWSは「×」が付くのを嫌う――。AWSに詳しいあるコンサルタントは、AWSがサービスのカバレッジを拡大させる背景をこう説明する。

 その中でもデータ活用はAWSが特に注力している分野であり、関連サービスの充実は、テクノロジーパートナーのビジネスに影響を与えそうだ。今はプレビュー公開にある、完全マネージド型ETLサービスの「AWS Glue」などもその一つだろう。

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