サービスアップデートのサイクルが早く、度重なる値下げを実施し、豊富なサービスを抱える――。これらは米アマゾン ウェブ サービス(AWS)の強みといえるが、強みであるがゆえにユーザー企業から苦悩の声も上がっている。対応を怠れば他社の追随を許す事態を引き起こしかねない。

 例えばアップデートのサイクルについて、あるユーザーは「ブログでいきなり新サービスが発表されるため、数年先を見据えたIT戦略のロードマップを描けない」と打ち明ける。

 別のユーザーは「当初AWSに無かった機能を独自開発したら、同様の標準機能が登場した。せっかく作ったが、標準機能を利用するように実装(方式)を変更した」と話す。

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSJ)の長崎忠雄社長は2017年5月31日、開発者やユーザー、ベンダーが一堂に会するイベント「AWS Summit Tokyo 2017」の基調講演で、新サービスの投入数や機能改善数について「2016年は1017に達した」と説明した。2013年は280、2014年は516、2015年は722と年々増加している。

AWSの新サービス投入数や機能改善数の推移
AWSの新サービス投入数や機能改善数の推移
(出所:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)
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 新サービスが次々登場したり、不具合の改善や機能拡張が迅速に実施されたりすること自体はユーザーにとって大きな利点だ。その影で何の前触れもなく登場する新サービスや機能に、ユーザーが振り回されている状況が生まれている。

似ているサービスの選定が大変

 サービスの数が多いことに対しては、「似たようなサービスがあり、どれを選べばいいのか悩む」といった意見も出ている。AWSJの長崎社長によると、2017年5月時点で「AWSには90以上のサービスがある」という。長崎社長は「顧客の声を聞き、求められるサービスを予測しながら追加してきた」と胸を張る。

 豊富なサービスはユーザーの多様なニーズに応えやすいことにつながる。ところが数が増え過ぎたことで選定に掛ける手間や苦労も増えている。前述のユーザーが似たようなサービスの例として挙げるのが、「Amazon Athena」と「Amazon Redshift Spectrum」だ。

 AthenaはオブジェクトストレージのAmazon S3上に保存された大量のデータを、SQLクエリーによって直接分析できるサービス。Redshift Spectrumも同じくS3上のデータに対し、データウエアハウス(DWH)サービスのAmazon Redshiftから直接クエリーを投げられるサービスだ。同ユーザーは「どこが違うのか検証してみないと分からない」と頭を抱える。

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