米アマゾン・ドット・コムのパブリッククラウド「Amazon Web Services(AWS)」のスピード感は、2006年のサービス開始から一貫している。新サービス投入や機能改善は、2016年の1年だけで1000件を超えたという。

 その結果、AWSのサービス数は膨らみ、100近くに上る(表1、2017年6月26日時点のプレビューを含む数)。仮想マシンの「Amazon EC2」、オブジェクトストレージの「Amazon S3」といったIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)を核に始まったAWSは、リレーショナルデータベースやNoSQLデータベース、IoT(Internet of Things)基盤などのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)も幅広く提供。さらに、人工知能(AI)などSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)も一部カバーしている。

 クラウドの特徴を生かし可用性や拡張性を高めたリレーショナルデータベース「Amazon Aurora」、ユーザーが仮想マシンを意識することなくサーバーレスでコードを実行できる「AWS Lambda」など、先駆的なサービスも少なくない。

表1●AWSが提供する主なサービスの一覧。プレビュー機能を含む。管理画面の「AWS マネジメントコンソール」と公式サイトの製品一覧を基に作成。内容は2017年6月26日時点のもの。
[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]

 スピード感をもってサービスを拡充することで利用を増やし、値下げの余地が生じたら料金改定も迅速に実行する。それによってさらに利用を増やし、サービス拡充や値下げにつなげる、という好循環を回す。

 AWSの業績は好調だ。2017年第1四半期の決算では、セグメント別でAWSの売上高は前年同期比で43%増の36億6100万ドル、営業利益は同47%増の8億9000万ドルだった。Amazon.comの北米地域の売上高は209億9200万で、営業利益は5億9600万ドル。AWSの売上高営業利益率の高さが際立つ。

整合にひずみ、看板サービスで価格が逆転

 しかしサービスの拡充や値下げのスピードを重視するあまり、その弊害も生まれている。サービスの実効性や料金の整合がおろそかになることが珍しくない。

 例えば、Webアプリケーションファイアウォール(WAF)サービスの「AWS WAF」。WAFという名称の通り、本来は、通信の中身を解析し、Webアプリケーションへの攻撃を遮断したりログを取ったりするサービスだ。ところが、通信の中身を見て攻撃かどうかを判別するためのシグネチャーをユーザーが自分で用意する必要があり、WAFとしての実用性は乏しい。

 料金の不整合も起きている。AWSの標準ストレージといえるAmazon S3には、データ耐久性(1年間でデータが消失しない確率)が99.999999999%(イレブンナイン)のスタンダードストレージと、99.99%の低冗長化ストレージがある。もともとS3低冗長化ストレージはS3スタンダードストレージの廉価版として登場したが、2016年12月にスタンダードストレージのみを値下げし、それ以来、低冗長化ストレージのほうが高いという価格の逆転現象が起きている。ユーザーはこうした不整合が起こることを念頭に置き、適宜料金をチェックする必要に迫られる。

次ページ以降はITpro Active会員(無料)の方のみお読みいただけます。