SD-WANという言葉は、日本では2015年ころから知られるようになった。その後、製品やサービスが多様化し、今やSD-WANの意味するところは広範囲に及んでいる。ここでは、SD-WANにまつわる様々な情報をQ&A形式で紹介する。また、代表的な機能として「ゼロタッチプロビジョニング」「インターネットブレークアウト」「ハイブリッドWAN」「セグメンテーション/マルチテナント」を解説する。

Q1
SD-WANを構成する3大要素とは?

 SD-WANの「SD」は、ネットワークの仮想化を総称する「SDN」(Software Defined Networking)から来ている。このことからSD-WANは、適用先をWANに絞ったSDNの一形態と言える。

 もっとも現実の商談の場では、SDNと言うとOpenFlowをベースとした従来製品をイメージする人も少なくないため、あえて「SD-WANはSDNとは違います」という説明も聞かれる。

 概念的なSD-WANは大きく3つの要素から成る。(1)主にクラウド上に置かれるコントローラー、(2)インターネットや閉域網をオーバーレイした仮想ネットワーク、(3)拠点に置くSD-WANルーター(CPE)/機器にインストールするエージェント―である。

 仕組みを一言で言えば、クラウドにあるコントローラーから仮想ネットワークを介して拠点のCPEを集中制御するというもの。

 SD-WAN製品の見た目の違いはほとんどなく、あえて言えば、拠点にCPEを置くタイプ(米ヴィプテラや米ベロクラウド・ネットワークス、米ヴァーサネットワークスなど)と、CPEは置かずに各機器にエージェントソフトをインストールするタイプ(米クレイドルポイントなど)に分かれる程度だ。

●SD-WANの概念図
●SD-WANの概念図
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Q2
2020年の市場規模や成長率は?

 SD-WANの市場規模について、米ガートナーと米IDCが2020年の売上高と年平均成長率(CAGR)をそれぞれ発表している。

 ガートナーの2016年12月5日付けWebinarサイト「SD-WAN Forecast and Opportunity―How SD-WAN Will Disrupt the Router Market」(https://www.gartner.com/doc/3535717?ref=AnalystProfile&srcId=1-4554397745)では、SD-WAN製品の売上高が2016年の1億2900万ドルから2020年には12億4000万ドルに成長するとの予測が示されている。CARGは実に76.2%となる。これは企業の拠点におけるルーター市場の中で見ているものだ。そのルーター市場全体のCAGRは6.3%減、その中で既存のルーターは28.1%減としている。このほか、WAN最適化装置やファイアウォール、MPLSサービスへの投資を奪う格好で成長するという。

 また、IDCは2016年3月24日付けのプレスリリースで、2020年に60億ドルを超えるという予測を発表している。2015年から2020年のCARGは90%以上となる。同社はSD-WANに関連する製品・サービス全般を対象としている。

 このほか、IDC Japanは2016年10月12日付けのプレスリリースで国内SD-WAN企業ニーズ調査結果を発表している。それによると、以下の特徴が見られたという。

  • SD-WAN導入に大きなメリットがあると回答した企業は、国内拠点については48.6%、海外拠点については59.5%
  • WANの課題解決策としてのSD-WANのマインドシェアは低い
  • SD-WANの望ましい導入形態では、ベンダー製品の導入(83.7%)が、通信事業者の回線に組み込まれたサービスの利用(14.4%)を圧倒的に上回る
●SD-WANの市場予測
●SD-WANの市場予測
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