プロ野球界では大谷翔平選手の「二刀流」の活躍が素晴らしいが、システム構築プロジェクトにおいては二刀流どころか、もっと複数の役割を一人が担うことが結構ある。

 プロジェクトマネジャー(以下、PM)がSEを兼ねてプレイングマネジャーとして働くケースも少なくない。小さなプロジェクトであれば、発注者側にとっては優秀なプレイングマネジャーは大歓迎かもしれない。プロジェクトメンバーにとっても、PMが現役バリバリのプレイヤーであることは心強い。PM自らSEとしても難易度の高い領域を担当してくれるほか、メンバーがミスしたり、壁に突き当たったりしたときに「代打、俺」とばかりにフォローしてくれる。こんな頼もしいPMはいないと誰もが思うはずだ。

 そんなPMがなぜダメなのか。素晴らしいPMじゃないかと思うかもしれない。もちろん、小規模かつ短期間のプロジェクトであればうまくいくほうが多いだろう。しかし、このプレイヤーPMは大きなリスクもはらんでいる。それは、このPMの能力と時間がそのままプロジェクトの限界になるというリスクである(図1)。

図1●エースで4番兼監督PM
図1●エースで4番兼監督PM
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 プロジェクトの規模が大きくなると、この「エースで4番兼監督」というのはすぐに通用しなくなる。それは高校野球ではエースで4番は大勢いるが、プロ野球では大谷選手という一人の例外を除いていないのと同じだ。高校野球とプロ野球ではレベルが違う。同様に、システム構築のプロジェクトも規模が大きくなるとマネジメントの難易度もSEの専門性もどちらも高いものが求められ、技術的にも時間的にも厳しくなる。

 プロジェクトメンバーが多くなれば、「代打、俺」も難しくなる。メンバー2人の小さなプロジェクトなら、うまく調整すれば2人のメンバーを同時にフォローすることもできよう。だが、もし10人のメンバーが同時に「代打お願いします」ときたら、いくら優秀なプレイヤーでも全部をこなすのは無理である。仮にすべての「代打」に対応できるスキルを持っていたとしても、時間的にこなせない。

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