企業が成長していくには、新商品の開発や、新事業立ち上げが不可欠だ。しかし、取り組む時間がなければ、実現は難しい。
「時間がなくて忙しい」と言わず、時間を作りにいこう─。
こんなスローガンを掲げて、2014年10月から、全社で「働き方変革」に取り組んでいるのが、リクルートマーケティングパートナーズ(RMP、東京・中央)だ。結婚情報の『ゼクシィ』、中古車情報を取り扱う『Car Sensor』など雑誌やネット事業を担う。
同社が提供する商品やサービスの多くは、市場で高いシェアを占める。しかし「少子化で市場が縮小傾向。既存の商品やサービスを提供していくだけでは、事業の拡大は見込めない」という危機感がある。
危機感を解消するには、新たな商品、サービスの開発や、新規事業立ち上げの必要がある。しかし2014年当時は、新規事業コンテストを社内で実施しても、20件ほどの提案件数しかなかったという。
背景に、現場の社員が日々の業務で多忙なことがある。「事業が成熟して、業務が複雑になっていたり、仕事量がかさんだりしていた」と企画統括室経営管理部人材開発グループの浅田優子氏は話す。
RMPは社員1300人の時間創出のため、働き方改革に乗り出した。その結果、新規事業を考える余裕が生まれ、2016年には新規事業コンテストの提案件数が、2年前の10倍に当たる200件に増えた。
成果を得るため、RMPは働き方改革で、「社員の意識改革」から着手。「古い業務を捨てる、見直す」「テレワークを導入する」「働く場を多様にする」の三つの施策を推し進めた。詳細を順に見ていこう。
ミドル層の意識改革からスタート
2014年10月、全社員に向けて「経営課題の解決策として、働き方改革に取り組む」と宣言した。
最初に着手したのが、部長や課長といったミドルマネジメント層の意識改革だ。「日々の業務のなかで、現場の社員に最も大きな影響を与えているのが、直属の上司に当たるミドルマネジメント層。ここの意識が変わらなければ、社員は変わらない」と浅田氏はにらんだ。
そこで半年間、全国のミドルマネジメント層が集まる会議を毎月開催。30時間をかけて、働く環境の現状把握したうえで、取り組むべき施策を導き出した。