チャットを商品やサービスの販路として活用すれば、対話を通じて顧客が曖昧だった欲しいものに気付き、有望な見込み客として取り込める。先進企業の取り組みを紹介する。

 Loco Partnersは、高級宿泊施設の予約サイト「Relux」を運営する。掲載施設の数でなく、顧客満足度が高い宿を厳選して掲載するという特徴を打ち出し、2016年2月に会員25万人、2017年3月に同70万人と急成長を遂げている。

 高価格帯の宿が多いこともあり、現状は40~50代の利用が多い。そこで若い顧客層を開拓するためチャットを使ったマーケティングに着手した。FacebookにあるReluxのページは「女性の一人旅」などのテーマを設けて豊富な写真や動画で宿を紹介するコンテンツなどを提供し、75万件の「いいね」を獲得している。チャットはこのページからの動線を作りやすいFacebook Messengerを活用した。

検索ボットで手軽に商品に触れる

 Reluxが支持を集めるのは、コールセンターで会員の要望にきめ細かく対応する「コンシェルジュ」サービスだ。ネットで予約できなかった宿への宿泊の交渉、宿への特別な要望の折衝などにもとことん対応する。Messengerでもこの有人による相談サービスを活用したい。

 一方でFacebookから流入する人は非会員が多く、旅行の計画があってもReluxの利用意向が強いとは限らない。利用の心理的なハードルを下げるため、手始めに予約できる宿を検索できるボットを導入した(図1)。メニューで地域を選び宿泊予定日を聞く予定日に回答すると、予約できる施設が写真付きで表示される。施設を表示した後に、コンシェルジュへの相談を選択できるメニューを置いた。

図1●宿泊予約サイト「Relux」はチャットからより若い層の問い合わせが増加
図1●宿泊予約サイト「Relux」はチャットからより若い層の問い合わせが増加
Reluxを運営するLoco PartnersがFacebook Messenger上で提供する、宿を検索できるボット。チャットで検索できる利便性よりも、お試し検索で宿情報を閲覧できる手軽さが受け、30代の若年層など新しい利用者を獲得できている。
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 効果は着実に現れた。Messengerに流入し 施設を検索した利用者のうち約10%がコンシェルジュへの相談を選んだという。サイト開発を統括する宮下俊執行役員は「予約でなく、気軽に商品に触れられるための検索機能を用意した。間口を広げる効果があった」と解説する。

 ReluxはLINEでも企業アカウントを開設しコンシェルジュの相談に使っている。LINEでも同様なボットで若年層を取り込む計画だ。