「小まめな情報共有を定着させる」「発言しやすい環境を作る」など、組織風土を改革するビジネスチャット導入例が増えている。成功企業 に共通するのはITツールの導入で終わらせず、利用場面を業務や働き方の中に位置付けて、浸透させる具体的な計画と施策を取っていること だ。そうした企業の実例を紹介しよう。
通販サイトの企画・構築を手掛ける3rd(東京・港)は、Web製作者やプログラマーなど外部人材を束ねて顧客企業からの受注案件をこなしている。発注先は国内外の個人事業主や受託開発企業の人材で、すべて遠隔で作業し成果物を3rdが取りまとめている。
同社でサイトの企画・設計や進ちょく管理を担う齋藤圭吾取締役は、協働作業する相手に合わせてSlackやChatWork、通話・チャットソフトの「Skype」などを組み合わせて連絡を取る。メインで用いるSlackで新たに試みているのが、投稿や会話の傾向からプロジェクトの危険を察知する仕組みだ。
お互いをよく知らない遠隔の協働作業で起こりがちな問題が、役割分担や実現手法に対する認識がずれたままになることだ。会話や投稿の履歴が残るチャットなら、単純な投稿量に加えて、誰と誰の会話が多いか少ないかなども分かる。ここから問題点を早い段階で察知し、プロジェクトを破綻の危険から救おうという発想だ。
分析に着手したばかりだが、齋藤取締役は次のような仮説を持っている(図1)。特定メンバーの投稿量が単純にある会議室で少なければ、その会議室の内容を見落としている可能性がある。共有すべき事項を念押しすべきだ。