「小まめな情報共有を定着させる」「発言しやすい環境を作る」など、組織風土を改革するビジネスチャット導入例が増えている。成功企業に共通するのはITツールの導入で終わらせず、利用場面を業務や働き方の中に位置付けて、浸透させる具体的な計画と施策を取っていることだ。そうした企業の実例を紹介しよう。
ITサービス準大手のセゾン情報システムズは経営改革の一環として、2016年5月からビジネスチャットの導入を進めている。開発遅延などトラブル案件が相次ぎ、同社は2016年3月期まで2期連続の赤字決算に転落した。改革の重要テーマの一つに掲げたのが「組織風土の改革」だ(図1)。
改革に携わった小野常務は「縦・横ともに組織の風通しが悪く、個人が問題を抱え込みがちだった。部門をまたぐと質問さえできない雰囲気もあった」と企業文化の問題点を挙げる。
例えば、プロジェクトが遅延し始めるなど多少の状況の悪化は「立て直しの途中だから上長には解決後に報告すべきだ。いま報告して不安を与えてはいけない」と現場が発想する。部下の報告に「遅れずしっかりやること」といった注意が管理職の役割ととらえる傾向も「まずは自己解決する」という意識に拍車をかけた。