「意思決定が圧倒的に速くなり、組織の壁を越えた連携も生まれるようになった」。セゾン情報システムズの小野和俊常務CTO(最高技術責任者)は、2016年に導入したビジネスチャットにより企業風土がどう劇的に変わったかをこう表現する。
同社は縦割りの事業部制や意思決定手続きの多さなどの弊害が目立ち、「隣の部署は別の会社」「悪い報告は上げない」という言葉がまかり通るほど風通しが悪化していたという。改革に携わった小野常務は、社員の自発性を促すというチャットツールの効果に期待した。
チャットは改革の手段の一つだが大きな役割を果たしたという。商談の話題を投稿した社員に、別部署の社員が自由にコメントを寄せる。ITエンジニアが面白いと思った新技術の話題を投稿し、議論が始まる。組織を超えたコミュニケーションが自然と大きくなっていったのだ。
全員が参加できる議論・情報共有の場
企業での導入に向いたビジネスチャットの提供が日本で始まったのは2011年。それから7年目を迎え、企業導入は着実に広がっている。導入企業の多くが挙げるメリットが、セゾン情報のように社内コミュニケーションを活性化させる効果だ。
ビジネスチャットの機能や使い方はベンダーによっても異なるが、主に(1)電子掲示板のように多人数で議論する機能、(2)1対1で会話する機能─を備える。(1)は会議室のような役割を果たし、製品によって「グループ」「グループトーク」「チャンネル」などと呼んでいる。全社的な公開も参加者を限定した設定も可能だ。
セゾン情報の場合は、事業部門やプロジェクトごとの会議室でも差し支えないものは公開設定にしたという。組織横断での議論を活性化させるためだ。全員参加の全社お知らせや技術トピックを語る会議室なども設け、自由な情報共有や議論に使えるようにした。「メールなら『▼FYI』と遠慮がちに送っていたニュースの共有も、チャットなら適切な会議室を探し手軽に投稿できる」(小野常務)。
テーマごとに適切な議論が行われ、流れも見えやすい。チャットはグループでの議論しやすさを意識し、自然なコミュニケーションが取れるよう開発されている。組織の問題をコミュニケーション活性化から変えようとする企業にとって、ビジネスチャットは、適切に活用すれば最も効果が期待できるITツールだ(図1)。
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