第2回で取り上げたように、国内企業でもビジネスのデジタル化が加速度的に進んでいる。こうした中で、IT人材に求められる役割は一層拡大し、多様化している。IT人材の育成にどう取り組んでいくのかは、企業経営者、IT部門長にとっての大きな課題だろう。

 ITを取り巻く環境や技術の変化のスピードが速いため、人材育成には長期的な視点が求められる。同時に、足元の重要課題や最新技術に対応できる人材のスピーディな確保にも対応しなければならない。人材リソースを社内外のどちらに求めるかの判断も求められる。一方で、年齢構成やキャリアプランといった、IT部門が抱える人材育成の構造的な課題への対応も待ったなしの状況ではないだろうか。

 このような難しい環境下で、各企業はどのようにIT人材の育成を進めているのか。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は、ユーザー企業のIT部門長を対象に実施した「企業IT動向調査2017」(調査年度は2016年度)で、人材育成の状況を調査した。第3回は、調査結果を基に各社の人材育成の現状を分析し、今後の人材育成戦略の方向性を見出していく。

IT部門要員は増加傾向

 IT部門の要員数の動向から見ていこう。過去5年間のIT要員数の増減傾向を図1に示す。

図1●IT要員数のここ数年(2~3年)の増減傾向
図1●IT要員数のここ数年(2~3年)の増減傾向
(出所:日本情報システム・ユーザー協会)
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 IT部門の要員数は、ここ数年増える傾向にある。要員が「増加」する割合から「減少」する割合を引いたディフュージョン・インデックス(DI)値を見てみると、2013年度調査でプラスに転じて以降、2016年度も6.1ポイントと増加が続いている。

 情報子会社でも要員が「増加」すると答えた企業の割合は34.0%と高い。DI値も19.8ポイントと、前年とほぼ同水準となった。

 IT部門要員の増減傾向を、業種グループ別に集計したのが図2である。「増加」の割合が最も高いのは金融の44.6%。金融では、Fintechへの取り組みに力を入れており、人員の増強も進んでいると考えられる。

図2●IT要員数のここ数年(2~3年)の増減傾向(業種グループ別)
図2●IT要員数のここ数年(2~3年)の増減傾向(業種グループ別)
(出所:日本情報システム・ユーザー協会)
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 2番目に「増加」が多いのが建築・土木の30.7%である。2015年度調査の23.7%と比べて大きく増えた。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、建設需要が増えていることなどが背景にあると見られる。

年齢構成は目指す姿とほど遠い

 IT要員の年齢構成はどのようになっているのだろうか。IT部門・情報子会社の年齢構成(現在と目指す姿)について尋ねた結果が図3である。全体の6割が、IT部門には「40代以上の層が多い(シニア中心型)」と答えている。一方、目指すべき姿は、「どの世代も均等」(38.1%)、「30代ミドル層が厚い(ミドル中心型)」(28.2%)、「20代若手層が厚い(若手中心型)」(21.4%)となっており、現状とのかい離は大きい。

図3●IT部門・情報子会社の年齢構成(現在と目指す姿)
図3●IT部門・情報子会社の年齢構成(現在と目指す姿)
(出所:日本情報システム・ユーザー協会)
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 同様の調査は、2014年度にも実施している。これと比べると、IT部門については「ミドル中心型」の割合が減り、「30代ミドル層が少ない(ミドル空洞型)」「シニア中心型」の割合が増えている(図4)。若手の増員が追い付かず、年齢の高齢化が進んでいると考えられる。

図4●IT部門・情報子会社の年齢構成(年度別)
図4●IT部門・情報子会社の年齢構成(年度別)
(出所:日本情報システム・ユーザー協会)※14 年度調査では選択肢「わからない」を調査対象としていないため、16年度調査も同様に「わからない」と回答した結果を除外して比較している。図3と図4で数値に若干違いがあるのはこのためである
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 聞き取り調査では「直談判をしてやっと今年新人を採用できた」「今年になって、中途やグループ内で集めたりして、やっといい形になった」といった声が多く聞かれた。年齢構成の是正に向けた動きも現れ始めており、今後の改善を期待したい。

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