技術の進化により、“感覚”、“状態”、“カタチ”などこれまで電子的に扱えなかった情報までもデジタル情報として処理できるようになってきた。様々なヒト・モノ・コトの情報をインターネットでつなぐことで、競争優位性の高い新たなサービスやビジネスモデルを実現する動きも進んでいる。

 こうした「ビジネスのデジタル化」が、企業のIT活用のトレンドとなっている。代表的なキーワードとしては、IoT(インターネット・オブ・シングズ)、AI(人工知能)、FinTech、ロボットなどが挙げられる。センサーやSNS、モバイル端末、取引情報などから集めた大量の情報を分析し、各種作業を自動化することで、新たなサービスやビジネスモデルの創造、既存ビジネスの劇的な改革を実現する。

 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)では、2016年度の「企業IT動向調査」で、ビジネスのデジタル化に関する調査項目を新設した。この結果から、国内のユーザー企業によるビジネスのデジタル化への取り組み状況を明らかにする。なお本調査では、ビジネスのデジタル化を「ITの進化により、様々なヒト・モノ・コトの情報がつながることで、競争優位性の高い新たなサービスやビジネスモデルを実現すること(例:IoT、FinTech、AIなど)」と定義している。

実施/検討中は4割、売上高1兆円の企業では9割に達する

 ビジネスのデジタル化への取り組みは、着実に始まっている。図1は、実施・検討状況を売上高別にまとめたものである。

図1●ビジネスのデジタル化の検討状況(売上高別)
図1●ビジネスのデジタル化の検討状況(売上高別)
(出所:日本情報システム・ユーザー協会)
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 全体で見ると、ビジネスのデジタル化を実施している企業(「成果あり」と「効果検証中」の合計)は12.5%、検討中の企業は26.7%。約4割がビジネスのデジタル化に向けた取り組みを始めている。

 実施率は、企業の売上高が大きいほど高い。売上高1兆円以上の企業で見ると、実施済みが48.0%、検討中が42.3%と、合計で9割を超える。

 売上高1000億円以上1兆円未満の企業でも、実施済みが20.2%、検討中が42.8%に達する。実施済みの割合は、売上高1兆円以上の企業に比べると大幅に少ないものの、6割以上が既にデジタル化を実施または検討している。

 一方で、売上高100億円未満の企業においては、実施済みが6.8%、検討中が15.9%に留まっている。大企業に比べて取り組みは進んでおらず、2割弱は関心もないという状況である。

 業種グループ別にビジネスのデジタル化の検討状況についてまとめたものが図2である。デジタル化の実施または検討が最も進んでいる業界は金融である。実施済みが17.9%、検討中が50%と7割程度がデジタル化を実施または検討しており、他の業界を大きく引き離している。実施済みの企業のうち、12.5%が既に成果を上げている点も特徴的である。取り組みの内容を自由記述で尋ねたところ、「AI」や「FinTech」などの分野でデジタル化が活発化していることが明らかになった。

図2●ビジネスのデジタル化の検討状況(業種グループ別)
図2●ビジネスのデジタル化の検討状況(業種グループ別)
(出所:日本情報システム・ユーザー協会)
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 金融に次いで取り組みが進んでいるのが、機械器具製造である。実施済みまたは検討中の企業は、48.3%に達する。ただし実施済みで成果ありとしている企業は3.4%と全業種の中でも最下位で、成果はまだまだという状況である。

 自由記述を分析したところ、製造業ではビジネスのデジタル化の中でも特にIoTに期待を寄せていると分かった。具体的には「製造機器の情報収集と分析」「ウェアラブルによる保守作業の高度化と効率化」「工場内での人の動きの分析と効率化」などの取り組みが始まっている。製造現場の生産性向上や、機器の監視/故障検知といった目的でIoTの活用が進んでいる。ただしこの分野ではまだ成果を実感できる企業は少なく、道半ばであることがうかがえる。

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