実名型口コミのグルメ情報サービスRettyは、元グーグル技術者の樽石将人CTO(最高技術責任者)がけん引するAI(人工知能)先進企業だ。飲食店ごとにユーザーが投稿した写真から最も映えるものを選ぶAI、飲食店ごとのキャッチコピーを考えるAI、接待向きといった飲食店のキャラを見極めるAIなど、様々なAIを独自に開発。事業成長のネックになっていた人手の業務を次々と自動化している。

左からRettyの樽石将人CTO(最高技術責任者)と、Software Engineerの竹野峻輔氏
左からRettyの樽石将人CTO(最高技術責任者)と、Software Engineerの竹野峻輔氏
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 本特集ではRettyのAIのうち先進的な3つを取り上げ、開発の経緯や仕組みを解説している。今回は飲食店ごとのキャッチコピーを自動作成するAI(以下、見出し作成AI)を紹介する。

飲食店の特徴を簡潔に伝える

 「天然素材にこだわった、優しさと滋味に溢れたラーメンが食せる店」「五反田で半世紀以上続く老舗洋食レストラン」。Rettyのサイトやアプリに掲載される飲食店には一つひとつキャッチコピー(見出し)が付けられている。

 キャッチコピーは、Rettyのユーザーが飲食店を探すうえで手掛かりになる重要なコンテンツ。しかし「以前は見出しが付いていた飲食店は全体の3分の1程度」(樽石CTO)。Rettyに登録されている約80万店舗全てに人手でキャッチコピーを作成するのは困難だったからだ。

 そこで開発したのが、ユーザーによる飲食店ごとの口コミ投稿文を基に、キャッチコピーを自動作成するAIである。

 見出し作成AIが作ったキャッチコピーの例は次のようなものだ。

 「電源ありWi-Fi完備、作業やミーティングに最適なお洒落カフェ」「ワンコインランチも人気の究極の焼き鳥ビストロ」「オシャレな雰囲気と本格派のハンバーガーが素晴らしい有名店」「朝から晩まで長蛇の列ができる名店うどん屋さん」。

 人間が作ったキャッチコピーと遜色ない出来に思える。

 Rettyはいかにして見出し作成AIを開発したのか。樽石CTOの指揮の下、このAIを開発したのは竹野峻輔氏(Software Engineer)だ。竹野氏は学生時代にRettyでのインターン経験はあったものの、2017年4月に入社するとすぐに見出し作成AIの開発を指示された。

優先度学習により見出しを抽出

 2017年5月にAIの開発を開始した竹野氏の最初の課題となったのが、どのような手法を使えば適切なキャッチコピーを作成できるかだ。「良いキャッチコピーには正解がない。AIをどう学習させればいいのか悩んだ」と竹野氏は振り返る。

 竹野氏がたどり着いたのは「優先度学習」を使うことだった。優先度学習は、2つの対象のうちどちらが好ましいかを学習させるという機械学習の手法の一つだ。「キャッチコピーの出来を数値評価するのは人でも難しいが、2つのキャッチコピーのうち良いほうを選ぶことはできるのではないか」と竹野氏は考えた。

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