月間利用者が3000万人を超える、実名型口コミのグルメ情報サービスRetty。元グーグル技術者の樽石将人CTO(最高技術責任者)がけん引するAI(人工知能)先進企業だ。

左からRettyの樽石将人CTO(最高技術責任者)と、ソフトウエアエンジニアの田松孝慈氏
左からRettyの樽石将人CTO(最高技術責任者)と、ソフトウエアエンジニアの田松孝慈氏
[画像のクリックで拡大表示]

 飲食店ごとにユーザーが投稿した写真から最も映えるものを選ぶAI、飲食店ごとのキャッチコピーを考えるAI、接待向きといった飲食店のキャラを見極めるAIなど、様々なAIを独自に開発。事業成長のネックになっていた人手の業務を次々と自動化している。

 本特集ではRettyのAIのうち先進的な3つを取り上げ、開発の経緯や仕組みを解説する。今回は画面映えする写真を選び出すという人の感性に踏み込んだAI(以下、映え写真抽出AI)を取り上げる。

行ってみたくなる写真を抽出

 映え写真抽出AIは、飲食店ごとの口コミ情報として様々な利用者が投稿した料理写真から、食べてみたいと思わせる画面映えするものを選び出す。論より証拠。以下はAIが選んだ「映え写真」だ。料理が美味しそうに見えるものばかりだろう。

投稿された1500万枚超の画像からAIが抽出した「映え写真」
投稿された1500万枚超の画像からAIが抽出した「映え写真」
(出所:Retty)
[画像のクリックで拡大表示]

 人の感性に踏み込むAIをいかにして作ったのか。このAIの開発実務を担当したのは、2017年4月にRettyに入社した田松孝慈氏だ。「新入社員研修の課題として、あえて若手に取り組ませた」と樽石CTOは話す。

 前例が見当たらないAIということもあり、田松氏は試行錯誤を重ねて開発していった。映え写真抽出AIのために、手本となる写真(教師データ)を探し出す別のAIを作る、といった力業も行った。前例のないAIの開発では、効率を考えるより、目の前にある課題を一つひとつ解決して先に進むことが重要なのだ。

 田松氏がどのように課題を乗り越えたのかを見ていこう。

最初の課題は教師データの作成

 2017年8月にAIの開発を始めた田松氏が最初にぶつかった課題は、食べてみたいと思わせる料理写真とはどんなものかをAIに学習させる教師データがなかったことだ。教師データはAI開発のキモ。その品質でAIの出来が大きく左右される。

 従来、Rettyでは一部の主要な飲食店について、人手で画面映えする写真を選んでいた。選んだ写真は、飲食店ごとのページで優先的に掲示している。

 しかし「人手で選んだ写真のなかには手本としてふさわしくないものもあった」と田松氏は打ち明ける。写真選びを外注していたこともあり、選考基準がバラバラだったのだ。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。