「ロボットで自動化する業務は極力絞り込んだほうがいい。言い換えると『全て自動化しようとしない』ことが大事」。こう話すのはコールセンター大手のTMJ(東京・新宿)事業推進本部変革推進部立上変革室の石井巧磨氏だ。

TMJはロボット化すべき作業を慎重に見極めた
TMJの市東朋広経営企画室室長(左)は「RPAは、AI(人工知能)と並ぶ、業務適用の研究テーマ」と話す。その現場適用を、事業推進本部変革推進部立上変革室の石井巧磨氏(右)が担っている
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 2016年春からBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)事業の現場でロボットの適用を進めてきたTMJは、「顧客から届くメールの一覧をエクセルシートで作成。その後、メールの内容に関連する情報を社内システムで検索して、エクセルシートに反映する」という業務をロボット化した。

 この業務では、メールの一覧作成をあえてロボット化しなかった。「メールの意見欄などにはお客様からの要望などが含まれている場合がある。ロボットで自動化すると、担当者がそれに気づかず、迅速に対応できなくなってしまう」(石井氏)。

 機密性が高い情報をロボットが扱う場合も、人と協業させる。担当者がシステムにログインした後で、ロボットを稼働。担当者が監督するようにしている。

 「システムへのアクセスや操作が自動的に行われると、業務の現場からセキュリティ面を懸念する声が出ることがある。実際にはロボットだからセキュリティに問題があるわけではないが、社員の心理をケアすることも、ロボット活用の重要なポイント」と石井氏は指摘する。

 また従来の業務システムと同じように「データの不備などで正常に処理できなかったときのエラーハンドリング」といった例外処理をロボットに作り込むことも避けたい。

 ロボット開発に詳しいRPAテクノロジーズの大石純司最高技術責任者は「プログラミングレスで開発でき、現場担当者の業務上の課題をすぐ解決できるロボットの良さを生かせない」と指摘する。

 大石氏が知るある企業は、RPAを使った業務効率化プロジェクトで、従来のシステムと同様、エラーハンドリングなどの例外処理を多数、組み込んだ。

 そのため、開発期間とテスト期間がともに3カ月と長期にわたり、現場が改善メリットを得るのに時間がかかってしまった。「ロボット化する作業を見極めて、シンプルな操作をさせるロボットを開発するのがポイント。テスト期間も短縮でき、現場の課題を迅速に解決できる」と大石氏は話す。