日本航空(JAL)は、東京・天王洲の本社に勤務する企画職を主な対象として「場所に縛られない働き方」と「残業半減」の二つの働き方改革に取り組んでいる。実現に向けて現場と人事部、経営トップの3者が連携し、複数の施策で改革を推進する。

紙の書類の電子化と、月1回の義務化で在宅勤務しやすく

 同社の調達本部は2014年、全社に先駆けて在宅勤務をテスト導入。配布したノートPCからVDI(仮想デスクトップ環境)経由で社内システムにアクセスし、業務用iPhoneを社員同士の連絡やテザリングに使う。

日本航空人財本部人事部ワークスタイル変革推進室の久芳珠子氏(左)と、調達本部調達第一部企画グループの埋金洋介グループ長
日本航空人財本部人事部ワークスタイル変革推進室の久芳珠子氏(左)と、調達本部調達第一部企画グループの埋金洋介グループ長
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 在宅勤務を定着させるため、調達本部では複数の工夫を取り入れている。一つはペーパーレス化と同時に進めたことだ。2015年2月には、フリーアドレス制を導入したことに伴い、会議資料をはじめとする書類の配布を禁止。既存の書類も法令文書などの例外を除き、スキャンして電子化するか廃棄するかの選択を迫った。

 業務に使う書類が全てファイルサーバーにある状態をつくり、在宅勤務のハードルを下げた。調達本部調達第一部企画グループの埋金(うめがね)洋介グループ長は、「業務の進捗はファイルサーバーの書類で確認でき、そのつど部下に問い合わせる必要はない」と話す。

 もう一つは制度面の工夫だ。調達本部ではBCP(事業継続計画)の観点も踏まえ、月1回の在宅勤務を義務付け、全員が在宅勤務に慣れるよう促した。半日単位の在宅勤務も認め「客先への直行直帰があるときや通勤路線が止まったときなどに在宅勤務を柔軟に使えるようにした」(人財本部人事部ワークスタイル変革推進室の久芳(くば)珠子氏)。

 在宅勤務をする際は原則として前日までに在宅勤務日と在宅での業務内容を申告しておく。当日は勤務開始時と終了時にテレビ電話で上司と話すルールも取り入れ、在宅勤務の実態が申告内容と乖離しないようにしている。

 これらの工夫が奏功し、調達本部で在宅勤務が定着。2015年には他部門でも在宅勤務が可能になり、2016年からは自宅以外でのテレワークも段階的に認めている。「出張の出先や喫茶店はもちろん、小さい子のいる家庭ではマンションの共用会議室を使う人もいる。それぞれの社員が集中できる環境を見つけてテレワークを実施している」(久芳氏)。

 さらに久芳氏は「業務内容によっては在宅勤務を基本とするなど、生産性が高まる業務にはテレワークを積極的に適用したい」(久芳氏)とする。例えばコールセンター業務を担う子会社で、利用者からのメールによる問い合わせに対応する部門などを対象に、週の大半を在宅勤務にできるよう検討している。

 そうすれば、例えば育児や介護で自宅を長時間離れられない社員も、JALを退職せずに働き続けられる可能性が高まる。また、メール対応業務ならば「単位時間あたりのメール返信件数などが手に取るように分かる」(久芳氏)ため進捗管理がしやすいし、返信メールは全て上司がチェックしたうえで利用者に送信しているので内容が問題になることもない。

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