「間もなく端末がシャットダウンしますので、データを保存してください」――。東京・築地の隅田川沿いにある住友生命保険の東京本社。毎晩7時40分になると、残業中の社員たちのPCに一斉にアラートが表示される。社員たちは手慣れた様子で、PCのローカル環境にある作業途中のファイルを保存。三々五々帰宅の途につき、午後8時には各階のオフィスから人影が消えた。

住友生命保険 勤労部勤労室の津田哲平副長(左)と人事部の小野寺成子部長代理
住友生命保険 勤労部勤労室の津田哲平副長(左)と人事部の小野寺成子部長代理
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 残業時間を月10時間減らすなど、同社の働き方改革で大きな効果を上げているのが、残業対策を徹底した勤怠管理だ。全国約1万人の内勤職員が使う業務用PCは、午後7時40分と7時50分にそれぞれ警告を出したうえで、午後8時に強制シャットダウン。ローカルのデータも消去する。一部の外勤社員に貸与するスマートフォンも午後8時以降は使用不能になる仕組みだ。

 もちろん、データをUSBメモリーやメールで他のパソコンに移し替えて自宅でサービス残業をすることもできない。朝も管理職は7時、一般社員は8時にならないと業務システムへログインできない。一般社員は休日のログインもできないよう設定されている。

「落ちるものは落ちる」前提に仕事組み立て

 人事部の小野寺成子部長代理は、「『落ちるものは落ちる』となればダラダラと仕事をしなくなり、午後8時までに仕事を終わらせることを基点として仕事を組み立てるようになる」と話す。

 例えば以前は、上司が部下に仕事を頼む際に時間をあまり気にしていなかった。部下にしてみれば、既に別の仕事を抱えて残業中の午後7時30分に「これやっといて」などとさらに仕事を頼まれれば、午後8時を超えて残業時間が延びてしまう可能性が高い。しかしシャットダウン時刻が明確に定められたことで、上司が部下へ無理な仕事の頼みかたをすることがなくなったという。

 もちろん、いかなる理由があろうと有無を言わせず強制シャットダウンするわけではない。事前に人事部へ申請すれば、シャットダウン時刻を変更することも可能だ。実際、決算期の保険経理部門やシステム保守時のIT部門のように延長が認められるケースもある。

 ただその場合も無尽蔵な延長ではなく「大半は1時間程度」(小野寺部長代理)。もちろん、恒常的に残業申請していたり、申請理由が特別な事情だと認められなければ、延長は許可されない。

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