パブリッククラウドの代名詞である米Amazon Web Services(AWS)が米国でサービスを開始して10年、日本でのサービス提供を始めて5年が経つ。2010年前後から日本企業も、自社が利用するサーバーなどのリソースが特定できるプライベートクラウドを中心にクラウドコンピューティングの導入に着手し、今では基幹系システムのインフラとしてクラウドを採用する動きも始まっている。

図●複数のパブリッククラウドを使いこなす「マルチクラウド」の採用が始まっている
図●複数のパブリッククラウドを使いこなす「マルチクラウド」の採用が始まっている
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 現在は、プライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせる「ハイブリッドクラウド」の形態でクラウドを導入する企業が増えつつある。そして今後は、パブリッククラウドの採用が増え、複数のパブリッククラウドを組み合わせて活用する「マルチクラウド」が主流になりそうだ。

 実際にハイブリッドクラウドから、マルチクラウドを指向する企業が登場している。クラウドを優先して採用する方針の“クラウドファースト企業”の1社であるノエビアホールディングス(HD)では既に、オンプレミスで稼働するサーバーは1台しかない。プライベートクラウドと、AWSなどのパブリッククラウドを組み合わせて社内システムを構築している。「各社のパブリッククラウドにも向き不向きがある。複数のクラウドを現在検討中」とノエビアHDの滝川奈緒美氏(情報システム部課長)は話す。滝川氏は、「パブリッククラウドの利用に懸念はない。最適なサービスがあれば、どんどん取り入れていきたい」という。

 ノエビアHDのほかにも、熊谷組、千趣会、大和ハウス工業、日本たばこ産業(JT)など、企業規模や業種を問わずに、原則、社内にサーバーを残さない方針の企業が登場している。千趣会のように、信頼性や可用性の観点からプライベートクラウドを自社のインフラ基盤の中心に据えていた企業も、パブリッククラウドに注目している。インフラを単にクラウド化する時代は終わり、マルチクラウドの時代が、確実に来ている。

 クラウドの導入が進むと同時に、「クラウドでコスト削減は難しい」という認識がクラウドを導入した企業やITベンダーの間で広がり始めている。

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