今回は、PR活動設計について整理します。
BtoB・IT企業の「リーンPR」
マスメディアの浸透とともに、PRは「大衆にモノを買いたくさせる空気づくり」のツールともてはやされてきました。ソーシャルメディアが拡大したこの10年で、“戦略PRは空気づくり“というイメージが広まった印象があります。
しかし「戦略」とは曖昧な言葉です。1964年に創業した共同PRには、今日でも問い合わせの際に、必ずといっていいほど“PRを戦略化したい”という要望が寄せられ、その語彙定義から始めます。「戦略」の言葉遊びにならないように、これから述べるステップを踏んで、具体的な活動に落とし込みます。
ここでBtoB・IT企業が意識しないといけないのは、消費者の“空気づくり”を狙った従来の「戦略PR」ではなく、決定権者を対象とするKPI(重要業績評価指標)に基づいた改善サイクルを持つことです。筆者が連載のタイトルにした「リーンPR」とは、PR活動の計画や実行、計測、改善を高速に回す、一連の活動を指しています。
BtoB・IT企業のほとんどは、主軸事業を「顧客企業のシステム、ネットワーク、セキュリティなどを管理するツールやサービスの提供」としています。その主な訴求対象は、「顧客企業」の情報システム、マーケティング、営業などの各部門に属する決定権者です。
顧客企業で購買決済が成立するには、経営への貢献度、企業全体との整合性、優先順位、法令順守、倫理遵守などから費用対効果があると合理的に判断される必要があります。このためPRでは、購買責任を負う決裁者(最終決定権者)に向けて、複雑化するデジタル経済の中でロジカルな判断ができるようにするための、情報提供を体系化する活動が必要となります。
こうした側面でも、広報PRそのもののデジタル化と並行して、少ないリソースで計画、実行、計測、改善のサイクルをより早く回す必要性が高まっています。
PR活動策定のステップは、まず1.PR案件(何をPRするか)、2.訴求対象(誰にPRするか)、3.リソース(ヒト、モノ、カネ、トキ)の洗い出しから始めます。そのうえで準備とフォローを含めた4.スケジュールとKPIを設定していきます。
特にスケジュール設定では、後述するターゲットメディアの選定、関係構築、記事獲得に掛かるプロセスを考え、計画、実施、効果測定、改善の期間を一セットで線表にします。KPI設定では、ターゲットメディアの露出(記事数、内容)およびトリガー(起因)となるイベント数、プレスリリース数などの関連項目を数値化します。