ドローンのデータ収集能力は極めて高い。下の写真1を見てほしい。写真とは言ったが、実はこれ、全てドット(点)で描写したイラストである。ドットの1個1個は、ドローンが上空から撮影し、収集したものだ。

写真1●山を切り崩して平地を造成している現場を3次元モデリングで描写
写真1●山を切り崩して平地を造成している現場を3次元モデリングで描写
画像提供:国際航業(宮城県気仙沼市の防災集団移転促進事業にて、大成建設の協力を得て同社が撮影したもの)
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 ドローンが上空から撮影した数百枚もの画像データを、3次元モデリングソフトで読み込んで大量の3次元座標データ(x,y,z)に変換する。この3次元座標データが、ドットの正体である。そのドットを3次元空間にプロットし、さらに実際の画像データに基いて着色すると、写真1のようなイラストが完成する。

 イラストとはいえ、ドローンが現場で収集した実データの集合体そのものである。斜面の傾きや高さ、地表の平坦さ、平面上の距離などは、そのまま測量データとして利用できるほど精度が高い。つまり、これまで数人がかりで時間をかけて作業してきた測量が、ドローンを使えばほぼ自動化できるわけだ。

 土木現場は、作業員以外にエリアを出入りする人がほとんどない。また、土地の所有者から依頼を受けて作業するため、ドローンの利用に対する了承も得やすい。このようにドローンを飛ばすための条件がそろいやすく、現在最もドローンの活用が進む現場の1つになっている。

 画像データは、ドローンに取り付けたデジタルカメラで撮影して収集する。デジタルカメラは、レンズを機体の真下方向に向けた状態でドローンに取り付ける。土木現場の上空50mほどの高さを飛行しながら、真下にある現場の様子を連続して撮影していく。

 こうして撮影された画像が、下の写真2だ。それぞれの画像データの下にファイル名が記載されているので、拡大して参考にしてほしい。最上段の左端「DSC09728.JPG」から撮影を開始し、最下段の右端「DSC09763.JPG」まで撮影した順番に並べてある。

写真2●ドローンが測量データを収集するために撮影した画像
写真2●ドローンが測量データを収集するために撮影した画像
画像提供:国際航業(宮城県気仙沼市の防災集団移転促進事業にて、大成建設の協力を得て同社が撮影したもの)
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 画像の移り変わりからドローンが飛行した方向が分かる。「DSC09728.JPG」から「DSC09743.JPG」までは、ドローンが画像の下から上に向かって飛行しながら連続撮影したものだ。続く「DSC09743.JPG」から「DSC09745.JPG」までは左方向、さらに「DSC09745.JPG」から最後の「DSC09763.JPG」までは下方向に飛行しながら連続撮影したものである。

 並んでいる画像を眺めていると、あることに気付く。撮影されているエリアのかなりの部分が、大きく重なっていることだ。実は、こうして重なるように撮影することが、3次元座標データに変換するうえで不可欠なのである。3次元モデリングソフトは、撮影した順番と重なっている部分の見え方の違いから地表の起伏を読み取り、3次元座標のデータに変換している。

 ちなみに、3次元座標データのドットは、デジタルカメラの画像センサー1画素に相当する。画素数が増えるほど大量の3次元座標データを収集できる一方、処理すべきドットの数が増えて3次元モデリングソフトでの処理時間が長くなる。「高度50mで撮影したときに1画素当たり1cm四方で撮影できる画素数」など、画像センサーを選択する目安を設けている企業もある。

 大量の画像データを1画素単位で比較し、3次元座標のデータに変換するため、3次元モデリングソフトの処理は、とにかく時間がかかる。処理性能の低いパソコンを使うと1日たっても処理が終わらないこともある。ソフトが高価なこともドローン活用の障壁だ。こうした背景から、最近は国際航業の「KKC-3D」といった必要なときだけ利用できるクラウドサービスが登場している。

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