多くの企業が、ユーザーが複数のチャネルやデバイスをシームレスに使えるようにして利便性を高めようとする、「オムニチャネル」によるサービス提供を加速させています。Webサイトやモバイルアプリケーションなどを駆使したオムニチャネルの広がりは、その半面で同一ユーザーによる重複登録や登録データの陳腐化といった問題も生み出すようになりました。結果として、パーソナライズしたマーケティングコミュニケーションの根幹ともいうべき顧客データの信頼性が大きく損なわれているのです。

 一方で、マーケティングオートメーション(MA)をはじめとするツールの導入が進むにつれて、多くの企業がここで得たデータと過去に構築したデータベースとの齟齬という問題に直面するようになりました。異なるシステム間のデータ連係がうまくいかず、それを補うために多大なコストが発生するといった事象が発生しています。

 さらには、日本国内で2017年5月に改正個人情報保護法が施行されます。欧州連合(EU)でも、2018年5月にEU一般データ保護規則(GDPR)が施行される予定です。こうした法整備により、多くの企業が個人データ管理の一環としてプライバシーとセキュリティの強化に向けた取り組みを求められています。

 全ての企業にとってデータの活用とその管理の両立が、喫緊の課題となっています。増加し続ける顧客接点を連携させユーザーのデータを最新に保ちながら一元的に把握してビジネス活動に適切に活用することと、それらのデータを高まり続けるセキュリティとコンプライアンスの要請に応えながら合理的なコストで管理することの、整合性をしっかり取る必要があるのです。

 これらの課題に対処するために海外で注目が高まっている手法に『カスタマー・アイデンティティ・マネジメント(CIM)』があります。本連載ではCIMの考え方を下敷きに、企業が意識しておくべき顧客データ管理のあり方を、いくつかの側面から論じていきます。

顧客体験とモバイルファーストの時代

 モノやサービスがあふれる現代、消費者が企業から買っているのは、「モノ」や「サービス」そのものではなく、それらによってもたらす「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)」になったといわれています。そして、多くの企業は「顧客体験」をどのようにデザインするかに注力しています。

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