ITproマーケティングが2017年4月14日に開催した「BtoBセールス&マーケティングSummit 2017 Spring」で、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授 博士(経営学) 余田拓郎氏は、マーケティング活動はマーケティング部門にとどまらず、全社で取り組むべき業務であると主張した。余田氏は、「BtoBマーケティングの可能性」と題した特別講演で、マーケティングの可能性を広げる指針について解説した。

慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授 博士(経営学)余田拓郎氏
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授 博士(経営学)余田拓郎氏
(撮影:都築雅人)
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日本におけるマーケティング手法の変化
企業はどう捉えるべきか

 余田氏は講演の冒頭、米国の経済学者フィリップ・コトラー氏が2013年に来日時に語った内容を引用しながら、「日本にはマーケティングをプロモーションだけと捉えているビジネスパーソンが多い」と解説した。さらに「マーケティング担当者が製品開発にまで踏み込むことが欠けている」として、コトラー氏の指摘は、BtoBマーケティングの可能性を考える上で重要であるとの見解を示した。

 余田氏は、最近の日本のBtoBマーケティングに見えている変化について、「マーケティング活動をプロセスとして管理するマーケティングプロセス管理が浸透しつつある」と指摘する。プロセスごとにKPI(重要業績評価指標)を設定し、ステージごとに分けてPDCAを回していくといったスタイルが、近年になってさまざまな現場に普及しているという。

 このプロセス管理に加えて重要視され始めているのが、「マーケティング活動に関わるデータの数値化」だ。余田氏は「プロセスごとにボトルネックを探し、課題を洗い出す。そのためにマーケティングでは、ROI(投資収益率)として数値化したり、ファネル分析をしたりしている」という。これらのデータを数値として見ることで、目標とかい離している部分を見つけ出せるというわけだ。

 近年、企業におけるマーケティングの手法にも変化が見えるようになっている。余田氏は、Japan Brand Strategyが調査したデータを基に「BtoBで企業が購入検討時に参考情報としているものは、Webサイトが最も多い」と説明し、カタログや営業、雑誌やテレビが上位にあった従来との違いを語った。

 余田氏はWebサイトが企業の情報媒体として選ばれる理由について、「既存メディアよりもローコストで実行できる」「閲覧後のユーザーの行動が把握できる」という2点を挙げた。

 その上で余田氏は、「既存メディアであれば、情報量とカバー範囲はトレードオフの関係になる」と指摘した。例えば、営業活動やカタログなどでカバー範囲を広げようとすると、情報量が減ってしまう。プッシュ型プロモーションの場合、情報量を増やすとカバーできる範囲は減少する。

 それに対して、Webサイトは「情報量が多く、カバー範囲も広い」ため、このようなジレンマは存在しない。余田氏は、「クライアントとの接点を持ちやすい上に、情報量の増加とカバー範囲の拡大を両立できる」と語り、企業のWebサイト活用の重要性が高まっている背景を説明した

マーケティングの可能性を引き出す
その三つのポイントとは

 マーケティングの変化は、Webサイト活用の増加だけではない。余田氏は、マテリアルハンドリング機器(マテハン)を扱っている物流メーカーのダイフクの事例を元に、常設展示場の活用例を紹介した。

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