ITproマーケティングが4月に開催した「BtoBセールス&マーケティングSummit 2017 Siring」で、東京商工リサーチ(TSR)事業本部 マーケティング部 部長 弓削正範氏は、ABM(アカウントベースドマーケティング)におけるターゲットアカウント選定方法を説明した。「ABMの成功の鍵を握るターゲットアカウントの選定方法とは」と題した講演で、顧客情報の整備こそが、売れる可能性が高いアカウント(ポテンシャルアカウント)の選定に重要であることを強調した。

東京商工リサーチ 事業本部 マーケティング部 部長 弓削正範氏
東京商工リサーチ 事業本部 マーケティング部 部長 弓削正範氏
(撮影:都築雅人)
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ターゲットアカウント選定のための
デシル分析と顧客属性の確認

 弓削氏が講演のテーマとして掲げたのは、ABMにおける重要な要素となる「ターゲットアカウントの選定方法」だった。ひと言で「ターゲットアカウントの選定」といっても、具体的にはどういった企業を「ターゲット」と考えるべきなのだろうか。

 弓削氏は「自社の顧客から優良顧客企業を定義して、同様の特徴や特性を持つ『ポテンシャルアカウント』をターゲットにする」と示した。つまり「売れる可能性の高いアカウントを見つけ出し、そこに集中してプロモーションすること」が重要という。

 しかし多くの企業では「優良顧客を選定する段階」に難しさがあるという。企業では、商談情報が入っているSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)、請求や売上データなどが入っているERP(統合基幹業務システム)というように、さまざまなツールやシステムを活用している。そのため、自社の取引先の情報や商談の状況を一箇所に集めることが困難で、「優良顧客を特定しようにも、どのお客様にどれだけ売り上げがあるのか把握できない」企業が意外に多いのではないかと、弓削氏は指摘した。

 そこで重要となるのが、名寄せやマッチングで顧客企業の情報を重複なく一意的に管理できる仕組みを整えることだ。名寄せやマッチングで整理された顧客企業の情報に売り上げや商談などの情報をひも付けていく。

 こうして作成したデータを基に、「どこが優良顧客なのかを分析するための二つつの方法がある」として、弓削氏は「デシル分析」と、東京商工リサーチが提供している「企業プロファイリング」を説明した。

 デシル分析とは、一般的に「二八の法則」や「パレートの法則」と呼ばれているものをあてはめた分析だ。具体的には、名寄せやマッチングで整理した企業を売上高の大きいものから並べて十等分し、「大きい方から上位何%でどれくらいの売り上げを占めているのかを確認する」(弓削氏)。

 通常、上位20%の企業群が自社全体の売上高の80%を占めることが多く、そのことから「二八の法則」と呼ばれている。この分析をすることで、「おおむね上位20%が優良顧客と定義できる」(弓削氏)という。

 これは売上金額、つまり購入金額で「Monetary(M)」に着目した分析だが、同時に「製品やサービスに対する『最新の購入日はいつか』といったRecency(R)、『一定期間に何回購入したのか』というFrequency(F)という視点を追加したRFM分析も一般的に実行されている」(弓削氏)と説明した。

自社の優良顧客が
どのようなプロファイルかを分析

 デシル分析で優良顧客20%を特定できたら、次はその優良顧客の特徴、つまり「企業の属性」を詳細に見ていく。BtoBの場合は購入者主体が企業や組織なので、その企業や組織を表す企業情報データや業種や売上高、従業員数といった情報が顧客属性となる。

 さらに、BtoBで顧客属性を確認するポイントとして、弓削氏は「購入を決定するのが企業や組織であっても、そこには必ず選定するキーパーソンがいる」と指摘。「そのキーパーソンの名刺情報や役職、所属部署の情報も重要。それらの情報を組み合わせたものがBtoBにおけるプロファイル、つまり顧客属性といえる」と語った。

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