ITproマーケティングが開催した「BtoBセールス&マーケティングSummit 2017 Spring」で、日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 セールスクラウド事業本部長 大熊裕幸氏は、販売代理店を巻き込んだデジタルマーケティングの重要性を訴えた。「オムニチャネル時代の販売代理店戦略とIT活用~販売代理店とメーカー間で分散する顧客情報の一元化とデジタルマーケティングの進め方」と題した講演では、カスタマージャーニーが複雑化する中、メーカーと販売代理店とのマスターデータマネジメント(MDM)の重要性を説明した。

日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 セールスクラウド事業本部長 大熊裕幸氏
日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 セールスクラウド事業本部長 大熊裕幸氏
(撮影:都築雅人)
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カスタマージャーニーの複雑化を
「脅威」と捉えるか「チャンス」とするか

 デジタルマーケティングを考えたとき、多くの企業が抱える課題として「営業とマーケティングとの間の深い溝」を指摘されることは多い。大熊氏も講演の冒頭、「我々の調査でも、マーケティング部門が営業部門に渡すリードの約50%が無視されている」と実情を述べた。一方、「営業部門からは『82%が良質なリードではない』という声も上がった。MAが盛んになった今、溝はますます深まっていると実感している」と状況を分析した。

 続けて、大熊氏は「現在、メーカーの70%は販売代理店などの間接チャネルから売り上げを得ている」とした上で、「営業とマーケティングだけでなく、販売代理店までを視野に入れて考えないと問題は解決しない」と指摘した。

 それでは、メーカーと販売代理店とがデジタルマーケティングを効率的に進めるには何をすべきか。大熊氏は、まずは「ビジネス環境の変化を理解すべき」と主張する。

 理解すべき変化の一つが「カスタマージャーニーの複雑化」だ。例えばマーケティングにも活用されることの多いSNSでは新しいサービスが急速に広がっている。「Facebookが5000万人に達するのに約1300日かかったが、Google+はわずか82日だった」(大熊氏)という。最近ではInstagramの画像やYouTubeの動画もセールスに活用されている。

 「顧客が様々なチャネルを通じてメーカーや製品、サービスに接点を持つ。接点の持ち方も顧客の嗜好によって異なる。この複雑さを脅威と捉えるのかチャンスと捉えるのか、そこが重要なポイントだ」と見解を示した。

 ビジネス環境の変化はそれだけではない。顧客がチャネルを変えて接点を持ってくる中、「顧客が様々なチャネルに残した『足あと』を統合し、データベース化し、活用しなくてはならない」(大熊氏)のだ。

顧客が「デジタルで判断する」時代
高まる販売代理店の重要性

 一方、顧客が製品やサービスの購入や導入を決断する過程にも変化がある。従来、BtoCの顧客、つまり一般的な消費者はインターネットなど様々な情報ソースを使い、購入する商品を比較検討していた。このような「デジタルで判断する」顧客がBtoBの領域にも急速に増えているという。

 大熊氏は、「ある調査によると営業担当者が訪問したときには、顧客の購買担当者の『意志決定プロセスの60%は終わっている』。見積もりを依頼されたとしても勝率は低い」と現状を説明した。しかも、「そうした状況にあっても、顧客に出向いて深く会話する営業担当者は多い。その結果、セールスサイクルが伸びたという企業は22%に過ぎず、成約率が下がっている企業は82%にも達している」と指摘。つまり、顧客が「デジタルで判断する」今、従来の取り組みではなく、「戦い方を変えていかないと、いくら勝負を挑んでも負け続ける」と厳しい実情を語った。

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