Q. LANケーブルってどうやって信号を送っているの?
A. 2本の信号線を組みにして、2本の電圧の差で信号を送る
企業ネットワークで使われるメタリックケーブルには、コード▼に8本の信号線が入っている▼(図1)。2本の信号線をねじり合わせて組みにした「より対線」という構造を採る。8本の信号線は、プラグの八つの端子にそれぞれつながっている。
信号のやり取りは、より対線単位だ。一方の信号線にプラスの電圧を、もう一方の信号線にマイナスの電圧をかけて、電位差(電圧の差)を使って信号を送る。この仕組みを「差動信号▼」という。
使わない信号線がある
4組あるより対線のうち何組を使うかは、イーサネットの規格によって決まっている。
例えば、最大データ転送速度100Mビット/秒の「100BASE-TX」や、現在ではほとんど使われなくなった最大10Mビット/秒の「10BASE-T」では、2組のより対線だけで通信する(図1上)。残りの2組は使わない。
一方、最大1Gビット/秒の「1000BASE-T」や最大10Gビット/秒の「10GBASE-T」では4組すべてのより対線を使う(同下)。
なお1000BASE-Tが普及する前には、より対線が2組しか入っていないLANケーブル製品も販売されていた。
同じ信号線で送受信する
信号の送り方も異なる。10BASE-Tと100BASE-TXは、使用する2組のより対線の一方を送信に使い、もう一方を受信に使う(通信相手は逆に、受信用、送信用として使う)。1000BASE-Tや10GBASE-Tは、4組のより対線すべてを送受信に使う。
このため10BASE-Tと100BASE-TXは、単純な回路で信号を取り出せる。一方、1000BASE-Tや10GBASE-Tには、送信と受信の信号を分離するためのハイブリッド回路という特殊な回路が必要になる。
本特集では、ネットワーク機器やパソコンのコネクターに挿し込む、LANケーブルの挿し込み部分を「プラグ」、いわゆる線に当たる部分を「コード」と呼ぶ。
初期のイーサネット10BASE5では、コードの中心に信号線があり、その周りに絶縁体、さらにその外側に網組みのシールドを入れた同軸ケーブルが使われていた。
プラスマイナスの電位差を使う差動信号に対して、0V(グラウンド)を基準とした電圧を使う信号は「シングルエンド信号」という。