「法人市場開拓の現実」をテーマに、セブン銀行法人営業部長の伊藤 浩太郎氏とマネーフォワード代表取締役社長CEOの辻 庸介氏が意見を交わした。2017年2月28日に開催された、「Nikkei FinTech Conference 2017」におけるセッションでの一幕だ。モデレータは日経FinTech編集長の原が務めた。

セブン銀行法人営業部長の伊藤 浩太郎氏(左)とマネーフォワード代表取締役社長CEOの辻 庸介氏
セブン銀行法人営業部長の伊藤 浩太郎氏(左)とマネーフォワード代表取締役社長CEOの辻 庸介氏
(撮影:加藤 康、以下同じ)
[画像のクリックで拡大表示]

 セブン銀行とマネ―フォワードは2016年12月に、セブン銀行の「売上金入金サービス」利用拡大を目指した業務提携を発表している。

 売上金入金サービスとは、飲食店やサービス業などの事業者が日々の売上金を最寄りのセブン銀行ATMから入金できるサービスである。このサービスと、マネーフォワードのクラウド型会計ソフト「MFクラウド会計」を連携させ、セブン銀行ATMでの入出金のデータを自動取得、自動仕訳できるようにする。日々の売上管理の手間を削減できるという。

コンサルが業務提携のきっかけ

 この提携のきっかけについて、マネーフォワードの辻氏が言及した。「2016年に5月に、関連会社であるマネーフォワードFinTech研究所が、セブン銀行に対するコンサルティングを始めたのがきっかけだった。当初は法人の参照系APIの連携から始まった」(辻氏)。

 「セブン銀行のように非常にユニークな業態の銀行が、FinTechによってどう変わっていくのかをディスカッションしていた」と、辻氏は振り返った。そして、MFクラウド会計と売上金入金サービスとの連携については、「全国の中小企業や飲食店などに対し、売上金入金サービスとクラウド会計をつなげるサービス」と説明、日々の売上管理を効率化できることを強調した。

 セブン銀行の伊藤氏はまず、全国に2万3000台のATMを設置している経緯について「セブンイレブンでは年に2回、100万人規模の顧客アンケートを実施していた。セブンイレブンの店舗への顧客ニーズを探るのが目的だが、そこで上位にあがっていたのが、ATMの設置だった」と説明した。

 現在では、来店客が入金や出金に利用するのはもちろん、セブンイレブンのフランチャイズ店では、オーナーが店舗の売り上げを入金するときにも、店舗のATMを利用しているという。

 伊藤氏は「銀行の窓口に行って入金するのは意外に手間がかかる。午後3時には窓口が閉まるので、午後1時くらいには店舗の売り上げを締め始め、午後2時に確定して、銀行に走る。窓口が混んでいるとすぐには終わらない。売上金入金サービスの目的には、そういう店舗オーナーの負担を軽減することもあった」という。

 ただし、同サービスの目的は、店舗オーナーの入金負担の軽減だけではないという。伊藤氏によると、セブンイレブン店舗のATM利用の8割は出金。ATMに補充された現金は減っていく一方なので、定期的な補充が必要となる。そこで、店舗の売り上げをそのままATMに入金すれば、現金の補充回数を減らし、運用コストを抑えられる。一挙両得というわけだ。

 セブン銀行のATMの運用には、セブンイレブンの「単品管理」の考え方が生かされていると、伊藤氏は話す。「ATMも、おにぎりや弁当と同じように、いわば“単品”で売り上げを管理している。1台ごとにATMの残高をモニタリングし、入出金の傾向をつかみながら、現金補充のタイミングを見定めている」という。

 ちなみに、セブン銀行のATMが硬貨に対応していないのは、「硬貨は詰まりやすく、故障の原因になりやすいから」(伊藤氏)とのこと。硬貨が詰まると、来店客がATMを利用できなくなるし、店側も修理の対応に時間がとられてしまう。それを回避するために紙幣だけを扱うようにしている。

[画像のクリックで拡大表示]

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。