トヨタが静岡市と組んで、オープンデータで世界標準仕様を打ち出した。厚生労働省は世界有数の規模と網羅性のある医療データをオープンデータ化した。日本が誇る公共交通網をオープンデータで世界に発信する取り組みも広がり始めた。それぞれの狙いを紹介する。
静岡市はトヨタIT開発センターと組んで、災害情報や道路規制情報、迂回路情報などをオープンデータとして、リアルタイムで提供するサービスを始めた。「しずみちinfo」という名称でデータを提供している。
オープンデータとは、行政機関や企業などが持つデータを、出所さえ明示すれば商用を含めて誰もが自由にコンピュータで加工・再配布できるように公開したデータのこと。企業がビジネスに活用できるほか、市民が身近な社会的課題の解決に役立てることができる。
しずみちinfoは2016年9月から、モバイル端末やソフトウエアを利用して、誰でも自動車で移動しながらインターネット経由でデータを取得できるようにした。Googleマップなどでもデータを見ることができる(図1)。
静岡市が手掛けるしずみちinfoの特徴は、全国の自治体で初めてリアルタイムの道路規制情報をオープンデータにしたことだ。Web API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)のサンプルコードを公開して、データ内容や位置情報をテキストデータで保持する「GeoJSON」と呼ばれる形式で公開した。
静岡市は当初、道路規制情報などをWebページで公開することを検討していた。だがそれでは、位置情報と組み合わせ、自動車で移動しながらデータを利用するのは難しい。「トヨタIT開発センターからの提案で、APIで配信することにした」(同市 建設局道路部道路保全課)。
静岡市とトヨタは、車両の運行状況をやりとりできるトヨタのテレマティクスサービス「T-Connectナビ」上で、APIで配信されるリアルタイムの災害情報や道路規制情報を基にルートを検索できるアプリケーションを試作した(図2)。実用化されれば、カーナビゲーションシステムで自治体が発信した災害情報や道路規制情報を取り込んで迂回路を表示できる。