QoSは、Quality of Serviceの略。「サービスの質」が直訳だが、通信の世界では回線で提供される通信やサービス(アプリケーション)の品質のことを指す。ネットワークでは、Webやメール、業務アプリケーションやIP電話など様々なアプリケーションが稼働している。その中で重要なアプリケーションを安定的に使うための機能がQoSだ。

 QoSは、優先制御と帯域制御によってその機能を実現している。古くは優先制御のみでもQoSと呼んでいたが、後に帯域制御の技術が出てきた。そこで現在は優先制御と帯域制御の両方を有することでQoSとするケースが多い。

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 優先制御とは、パケットに優先度を付けて送出すること。優先度が高いパケットはほかのパケットよりも先に処理する。つまり、そのパケットを送出したアプリケーションの品質を安定させられる。パケットは送出する前に、キューと呼ぶ場所に置く。キューには優先度があり、それに応じてパケットが送出される。

 優先制御はこのキューの使い方で2種類に分類できる。一つは、特定のキューにあるパケットはほかのキューのパケットよりも必ず優先して送出するというもの。「SPQ」という方法が有名だ。もう一つは、キューごとに段階的な重み付けをし、その重み付けの割合によってキューの中のパケットを順番に送出するものだ。例えば三つのキューがある場合、「5:3:2」の割合の順番に送出するのだ。「WRR」といったりする。

 一方の帯域制御とは、あるアプリケーションで使う帯域をコントロールすることだ。帯域の設定方法で、「帯域保証」と「帯域制限」の二つに分かれる。アプリケーションが利用する帯域について、帯域保証は下限値を、帯域制限は上限値を設定する。やりとりするデータ量から、最適な値を設定するのである。

 優先制御や帯域制御を行うには、ネットワークを流れているパケットがどのアプリケーションで使っているものかといったことなどを事前に識別しておく必要がある。パケットの中にある識別子を判読して整理する作業をクラシフィケーションという。クラシフィケーションをしてから、優先制御と帯域制御を行うのである。

 優先制御と帯域制御は別々に設定できる。例えば、IP電話のパケットはリアルタイム性が重要なので優先制御の順番を上げるが、データ量は少ないので帯域制御の帯域保証の値は小さくできる。二つの制御をどのように設定するかで、QoSの結果をコントロールする。