「ITインフラSummit 2017」の基調講演に、大成建設の北村達也氏が登壇した。同社は業務の生産性向上や新規ビジネスの創出を目的に、新たなコミュニケーション基盤としてOffice 365を導入している。その経緯や背景を説明した。

大成建設 社長室情報企画部 部長(担当) 北村 達也 氏
大成建設 社長室情報企画部 部長(担当) 北村 達也 氏

 大成建設は2016年5月に、グループ会社を含む2万1000人を対象にOffice 365を導入した。主な狙いは、業務生産性の向上だ。「業務処理量は、生産性×就業時間で決まる。業務処理量を増やすには、生産性を高めるか、就業時間における投下時間(実際に業務処理に要した時間)の割合を増やせばよい」(北村氏)。

 この背景には、2020年前後にやってくる業務量のピークに現行の要員数で対応しなければならない、という事情がある。さらに、2020年以降に予想される国内の建築需要の急落に備えて、国内外を問わないワークスタイル(働き方)を確立する必要もあった。

 しかしワークスタイルを変えることは難しい。そこでまずはワークプレイス(仕事場所)を変えることにした。「移動時間に仕事ができないか、連絡待ちの時間を減らせないか、と考えた」(北村氏)。設計部門や営業部門など5つの部門の社員に仕事の時間配分をヒアリングした結果、月間就業時間の6~16%の時間を“創出”できると分かったという。

 この結果を受けて、いつでもどこでも情報を共有できる環境を整備した。ツールとしてOffice365を選んだ主な理由は、セキュリティだった。国内のデータセンターで運営できるうえ、AzureのExpressRoute機能を使うことで、インターネットを介さず、本社や作業所の社内ネットワークから閉域網で直接接続できるからだ。

 ただし、外出先のモバイル端末からは、インターネット経由でアクセスすることになる。このため同社は、モバイル端末についてはMDM(モバイル端末管理)ソフトの「Microsoft Intune」を使ってセキュリティを確保した。万が一端末を紛失しても、業務用の領域だけをリモートから消去できる。

 Office 365を全社に広める過程では、段階的に利用部門を巻き込んでいった。最初は100人からスタートし、200人、1000人と増やしていき、趣旨説明会や操作説明会、全社プレビューなどを経て導入していった。

 同社におけるワークスタイルの変化について北村氏は、「世代によって意識のギャップがある」と指摘する。「40代以上は、電子メールが便利であることを知っている。30代以下は、電子メールが不便であることを知っている」(北村氏)。これまでは40代以上に合わせてコミュニケーションツールを提供してきたが、今後、働き方を変えていくうえでは、「30代以下にも使えるツールが必要になる」(同)という。

 最後に、「遅刻の連絡をLINEでする」ことの是非を問う民放テレビのアンケートで、65%が「許せない、電話すべき」と回答したという話題に触れ、「寛容な文化を広めよう」と述べて、講演を締めくくった。