「ITインフラSummit 2017」の特別講演に、オリックス生命保険の菅沼重幸氏が登壇。ユーザーの目で見たハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)製品のメリットとデメリットを解説した。同社は全社共通インフラ基盤として、米Nutanix製のHCI製品を使っている。

オリックス生命保険 常務執行役員 菅沼 重幸 氏
オリックス生命保険 常務執行役員 菅沼 重幸 氏

 同社は2015年11月にSIEM(セキュリティ情報イベント管理)とマイナンバー管理システムのインフラとして、NutanixのHCIアプライアンス7ノードを導入。30台のVM(仮想サーバー)を動作させた。これを皮切りに、VDI(デスクトップ仮想化)システムや、コールセンター支援システムなどの業務システム群にもHCIの適用範囲を広げてきた。

 現在の規模は、新規の業務システムを動かすための共通インフラ基盤として46ノード261VM、VDI環境として16ノード1038VMである。

 「HCIはリソースプールというコンセプトに合致する」と、菅沼氏は評価する。背景には、HCIではリソースを共通化できることがある。一般に、サーバーやストレージなどのリソースを個別に調達すると利用率は低くなる。逆に、リソースを共通化すると利用率を高く維持できる。

 リソースが不足しそうな時には、必要な分だけを小刻みに増設できる点も、HCIのメリットだ。「従来は、リソースが不足しそうになったら、余裕を見て一気に増設するしかなかった」(菅沼氏)。その結果、利用率が低い水準にとどまってしまう。だがHCIで細かく増設すれば、利用率を常に高く維持できる。

 既存システムとの整合性の高さもメリットだという。「物理サーバーから仮想サーバーへの移行は簡単だ」(菅沼氏)。ただし、HCIはx86アーキテクチャなので、x86以外のプラットフォームで動作しているレガシーシステムについては、切り捨てるか再構築が必要になる。そのため、「特殊な業務システムは今もメインフレームで動かしている」(同)。

 HCIのデメリットとして菅沼氏がまず挙げたのは、安直なリソースプール化が起きやすいこと。簡単にリソースを増設したり、アプリケーションにリソースを割り当てたりできるので、ややもすると本来必要でない用途にリソースを消費してしまうことになる。「投資の正当性やリソースへの要求にガバナンスを効かせる必要がある」(菅沼氏)。

 次に、「運用管理ツールがベンダー製になることで、ベンダーによるユーザーの囲い込みの懸念もある」(菅沼氏)と注意を促した。

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