イノベ案件とは、イノベーション創造型のITプロジェクト案件のこと。ITを活用して新しいデジタルビジネスやデジタルサービスを創出する。プロジェクトは、経営企画や研究開発、マーケティング、IT部門といった、さまざまな役割を持つ部門から成るのが特徴だ。その一方で、クラウドやAI、IoT(Internet of Things)、ビッグデータといった最新技術を多用することから、ITエンジニアが今後活躍する“表舞台”として注目されている。

 イノベ案件は、従来の業務改善型のITプロジェクトと違って、最初から明確な課題があるわけではない。ビジネスの変革を促すために、誰に何が必要なのかをコンセプトやビジョン、ミッションとして定義する必要がある。そのためマネジメントの対象もプロフィット(利益)よりもベネフィット(価値)となる。新たな顧客接点を生み出す「SoE(System of Engagement)」型の案件とも呼ぶ。

 プロジェクトは不確実性が高く、短い期間で開発を繰り返すアジャイル開発プロセスが向くとされる。また複数のプロジェクト群を束ねるプログラムマネジメント、現場観察を起点に課題や解決策を見いだすデザイン思考などのアプローチが求められる。

 実際、2017年9月に登場するプロジェクトマネジメント体系「PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)ガイド」の新版(第6版)では、このイノベ案件への対応を大幅に強化。旧来型の業務改善プロジェクトと同等に扱われる予定で、2017年のイノベ案件の拡大を後押ししそうだ(関連記事:「プロマネの教科書が遂に刷新、重点はイノベーションへ」)。