オフィスコンピュータ、略してオフコン。日本ベンダーが「独自OS、独自CPU、独自きょう体」という独自路線で作り上げた小型コンピュータは、1960年代から1990年代に全国の中堅中小企業や工場の情報化を後押しした。
数十のベンダーが市場に参戦。オフコンを売り、その上でシステムを構築する販売店(ディーラー)網を築いた。ラインプリンターやFD(フロッピーディスク)、モデム、POS(販売時点情報管理)レジ、ハンディーターミナル、UPS(無停電電源装置)――。販売店は次々と生まれる周辺機器を使い、多様なシステムを作り続けた。
最盛期の1990年代、シェア3割を握る富士通は1974年の参入から「累計で50万台出荷に沸いた」(神尾彰一エンタプライズシステム事業本部基幹サーバ事業部オフィスサーバ開発部部長)。トップを争うNECは「最盛期の1993年ころは年間8万台を出荷していた」(本永実パートナーズプラットフォーム事業部長代理)という。
2強に割って入ったのが日本IBM。1988年に「AS/400」を投入し、「椎名武雄元社長の号令で中堅市場を開拓した」と久野朗IBMシステムズハードウェア事業本部ハイエンド・システム事業部Power Systems部長は話す。
だがWindowsサーバーの登場で市場は一変する。オープン化の波に抗えないベンダーは「既存資産を守り続ける」として、オフコンOSをWindowsや汎用CPUで動作できるように改変し始めた。
その後、採算が合わなかったり、新技術に技術者を振り向けたりするため、各社は撤退を選んだ。日立製作所は1993年に、東芝は1996年に事実上の最終モデルを出荷。IDC Japanによれば、年間出荷台数は2000年の1万170台から、2015年はその約1割である1022台にまで落ち込んだ。それでも各社の聞き取り調査によると1万台を優に超えるオフコンが日本で稼働している。