「アプリケーション開発をトランスフォーム(変革)する」。映画「トランスフォーマー」のTシャツに身を包んだ米Amazon Web Services(AWS)のWerner Vogels CTO(最高技術責任者)は2016年12月1日(米国時間)、「AWS re:Invent」の基調講演でそう宣言(写真1)。CI(継続的インテグレーション)やセキュリティ、監視などの新サービスを12種類立て続けに発表した。

写真1●米Amazon Web Services(AWS)のWerner Vogels CTO(最高技術責任者)
写真1●米Amazon Web Services(AWS)のWerner Vogels CTO(最高技術責任者)
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 AWSのCTOであるVogels氏は毎年、アプリケーション開発者向けのメッセージを基調講演で発信している。今回の基調講演もターゲットは開発者だが、その内容はほぼ運用管理に関するものだった(表1)。Vogels氏は「運用(オペレーション)は見落とされがちだが、ビジネスのアジリティ(迅速性)を支える上で運用の変革は欠かせない存在だ」と訴え、開発者が運用も担う「DevOps」を実現するためのツールをAWSが提供する重要性を語った。

表1●AWSが12月1日に発表した新機能
サービス名分野概要
AWS CodeBuildシステム運用CI(継続的インテグレーション)のサービス。アプリケーションのコンパイルやテスト、デプロイなどを自動化できる。有料
AWS X-Rayシステム運用分散アプリケーションの監視ツール。複数のサーバーにまたがる処理の流れを追跡し、問題を突き止める。有料
AWS Shieldシステム運用AWSで運用するアプリケーションをDDoS(分散型サービス拒否)攻撃から防御する無料サービス。有料版もある
AWS OpsWorks For Chef Automateシステム運用「Chef Automate」のサーバーをAWSが運用するサービス。ミドルウエアなどの設定変更作業を自動化できる。有料
AWS Personal Health Dashboardシステム運用ユーザーが利用しているAWSのサービスの稼働状況だけをダッシュボードに表示する。無料
Amazon EC2 System Managerシステム運用Amazon EC2仮想マシンへのソフトウエアのインストールやOSのパッチ適用などを自動化する無料
AWS GlueデータETL(抽出、加工、転送)ツールのサービス。データ分析に必要となる下準備を自動化する。料金未定
Amazon Pinpointデータモバイルユーザーの行動を分析するマーケティング支援機能。分析結果を基にユーザーを分類し、通知などを送る。有料
AWS Batchプロセッシングバッチ処理のジョブ管理サービス。シェルスクリプトやLinuxの実行ファイル、コンテナイメージを自動実行する。無料
AWS LambdaのC#対応プロセッシングイベント駆動型コード実行サービス「AWS Lambda」で従来のNode.js、Ruby、Pythonに加えてC#に対応
AWS Lambda@EdgeプロセッシングCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)の「CloudFront」がある場所でLambdaのコードを実行
AWS Step Functionsプロセッシング複数のLambdaコードを決められた順序で連続実行するワークフロー機能

 AWSが今回発表したサービスの多くは、従来はパートナー(サードパーティー)が提供していたもの。AWSがサードパーティーの機能を飲み込みながら巨大化を進めているという構図が改めて浮き彫りになった。「システム運用」「データ」「プロセッシング」の三つの分野ごとに、主な新サービスを見ていこう。

 システム運用に関する新サービスの目玉は、CIやCD(継続的デプロイ)のサービスである「AWS CodeBuild」や、分散アプリケーションの監視サービスである「AWS X-Ray」、DDoS(分散型サービス拒否)攻撃からアプリケーションを防御する「AWS Shield」だ。

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