APには、プロセッサー、無線LANチップ(無線チップ)、メモリー、レイヤー2(L2)スイッチのチップといった様々なチップが使われている。こうしたチップの構成を知っておくと、製品の性能を推測する手がかりになる。

 例として、台湾エイスーステック・コンピューターの「RT-AC87U」のメイン基板を図2に示した。無線チップが、2.4GHz帯用の「BCM4360」(米ブロードコム)と5GHz帯用の「QSR1000」(米クアンテナ・コミュニケーションズ)に分かれている。BCM4360は5GHzにも対応しているが、IEEE 802.11acの受信アンテナ3×送信アンテナ3(3×3)のMIMOにしか対応していないため、あえて受信アンテナ4×送信アンテナ4(4×4)のMIMOに対応したQSR1000を搭載し、マルチベンダーのチップ構成になっている。

図2●RT-AC87Uのメイン基板
図2●RT-AC87Uのメイン基板
5GHz帯と2.4GHz帯のそれぞれに異なる無線チップを使っているのが特徴である。
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 「BCM4709」は、CPUやL2スイッチ、USBといった機能を集積したSoCになっている。BCM4360とBCM4709の間はPCI Expressで接続されているのに対し、BCM4360とQSR1000の間は1GビットイーサネットのインタフェースであるRGMIIで接続されている。

 一方、後継製品である「RT-AC88U」は、ブロードコム製チップで統一されている(図3)。「BCM4366」は4×4 MIMOに対応しているためだ。BCM4709とBCM4366との間はPCI Expressで接続されている。

図3●RT-AC88Uのメイン基板と内部構成
図3●RT-AC88Uのメイン基板と内部構成
同製品は、1Gビットイーサネットのポートを8個備えている。そのうち5ポートは台湾リアルテック・セミコンダクターのスイッチングハブコントローラーで実装されている。高速な通信が必要な用途では、プロセッサーに直接接続されている3ポートを使ったほうがよい。
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 なお、BCM4709のL2スイッチ機能は4ポートであるため、1ポートを台湾リアルテックセミコンダクターのL2スイッチコントローラーに接続し、5ポートに拡張している。このため、高速な通信が必要な用途では、BCM4709に直結されている電源ソケット寄りの3ポートに接続するほうがよい。

 一方で、安価なAPはもっとシンプルな構成になっている。図4は、海外で15ドル程度で販売されているAPのメイン基板である。802.11n対応製品であり、5GHzには対応していない。1チップに無線LANのすべての機能を搭載するSoCを採用することで、部品点数を少なくしてコストや消費電力を抑えている。

図4●安価なAPのメイン基板
図4●安価なAPのメイン基板
海外で15ドル程度で販売されているAPのメイン基板。1チップに無線LANのすべての機能を搭載するSoCが使われている。部品点数を少なくしてコストや消費電力を抑えている。
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▼MIMO
Multiple-Input and Multiple-Outputの略。複数のアンテナを使って無線通信を高速化する技術。
▼SoC
System on a Chipの略。
▼RGMII
Reduced Gigabit Media Independent Interfaceの略。
▼安価なAP
この製品はあまり安定して動作しないが、設計に問題があるのか、この個体だけの問題なのかは不明である。

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