タブレット端末であらゆる客室サービスを
[金谷ホテル観光]

 ホテルの客室にはどんな「電話」があるべきか。時代に合わせて機能を見直した結果、金谷ホテル観光は栃木県日光市で営業する「鬼怒川金谷ホテル」で自営PBXと客室の卓上電話機を廃止。クラウドPBXとタブレット端末で代替した。鬼怒川金谷ホテルは金谷ホテル観光が運営する施設の中でも、高級路線をとるリゾートホテルだ。

 契機は2014年にPBXが故障し、客室から通話ができないなどのトラブルに見舞われたことだった。中古のPBXを購入して急場をしのいだものの、これを新機種に刷新したとしても故障のリスクは消えない。そこで施設運営を担当する経理部の小林秀樹部長は、メーカーの駆け付け保守に頼るPBXの自営そのものをやめる検討に入った。

 検討や見積もりの結果、NTT東日本のクラウドPBX「ひかりクラウドPBX」を採用した(図6)。

図6●客室用電話機をタブレット端末に切り替えた鬼怒川金谷ホテル
図6●客室用電話機をタブレット端末に切り替えた鬼怒川金谷ホテル
PBXの故障トラブルを避けるため更新期にPBXを廃棄し、クラウドPBXとタブレット端末に刷新した。使われなくなっていた客室からの外線発信機能も廃止した。
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客室に外線発信はいらない

 刷新に当たっては、宿泊客の電話の使い方が変わったことも考慮し、機能や端末を見直した。まず客室からの外線発信の機能を廃止した。客室から外線にかける宿泊客は極めて少なくなっていたからだ。

 タブレット端末の導入も、使い方の変化を考慮した結果だという。まず「客室の雰囲気に合うIP電話機がなかった」(小林部長)うえに、電話の使い方は主にフロントへの連絡や客室間の内線通話だけになる。スピーカーモードで話せるなら、短時間で済むことの多いフロントとの会話には十分だ(写真1)。

写真1●鬼怒川金谷ホテルが導入した通話用の端末
写真1●鬼怒川金谷ホテルが導入した通話用の端末
タブレット端末(NEC製のAndroid搭載機)。IP電話アプリを標準起動させ、画面を常時点灯する設定に。操作マニュアルも近くに置いた
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客室での設置状態。スピーカーモードで卓上に置いたまま話せる。選択肢が少ないSIP型ビジネスフォンよりも、部屋の雰囲気に合うと評価した
客室での設置状態。スピーカーモードで卓上に置いたまま話せる。選択肢が少ないSIP型ビジネスフォンよりも、部屋の雰囲気に合うと評価した
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併用したIP電話機。フロントや各階のエレベーターホールにはSIP対応のビジネスフォンを設置
併用したIP電話機。フロントや各階のエレベーターホールにはSIP対応のビジネスフォンを設置
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 タブレット端末の採用を後押しした理由はもう一つある。将来的に、ルームサービスの注文を受けたり観光情報を提供したりする機能拡張を予定しており、それが容易である点だ。ホテルのロビーには館内サービスや観光地のパンフレットがあふれている。それも「タブレット端末で情報を提供すれば多くのパンフレットを廃止できる」(小林部長)。

 2016年5月に導入した新システムでは、客室に置いたタブレット端末41台とフロントなどスタッフが館内で業務に使うIP電話機15台ほどをクラウドPBXに収容している。外線発信の機能は業務用のIP電話機だけが備える。鬼怒川金谷ホテルの宿泊客は年配層が多いため、最初は使い方を巡るトラブルもあったが、ちょっとした工夫により現在は解決したという。端末のスリープを禁止して画面を常時点灯させる、端末の初期画面を通話アプリにする、操作マニュアルをそばに置くといったものだ。

 客室数がそれほど多くないため、中規模PBXを導入していたが、従来型で刷新した場合とのコスト比較で大きな優位はなかった。初年度は新たにルーターを導入するなどの工事費が大部分を占めた。ただし間接的な効果として、電話刷新に伴う回線の見直しがコスト削減効果を生んだ。宴会場にある通信型カラオケで使っていたISDN回線や部署ごとに契約していた電話回線、インターネット接続を解約し、データ通信はNTT東日本が提供するフレッツ光の2回線に集約した。

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