一度はやめたBYODで内線通話
[DeNA]

 ソーシャルゲーム大手のディー・エヌ・エー(DeNA)は、スマートフォンの業務活用を“深化”させるため、私物の端末を業務で活用するBYODを導入した。以前は法人契約したスマホを正社員全員に支給していたが、これを原則廃止。メールや情報共有のほか、内線通話の機能もBYODに実装して、私物のスマホで場所を問わず仕事ができる環境を整えた。

 BYODの導入は2014年4月のこと。現在までに2年あまり経過したが「無駄の削減や、社員一人ひとりの働き方に合わせてスマホ活用を支援するという、BYODで狙った効果は出せた」とプロジェクトを担当した人事総務部総務グループの宮本行久グループマネージャーは語る。

 実はDeNAのスマホ活用は、BYODを初めて導入した「第1期」、そのBYODを廃止して会社支給を始めた「第2期」、会社支給をやめて再びBYODを導入した現在の「第3期」と変遷をたどっている(図4)。

図4●FMC端末を会社支給のスマホからBYODに移行させたDeNA
図4●FMC端末を会社支給のスマホからBYODに移行させたDeNA
スマホの会社支給を廃止。実際に業務でFMCや情報系アプリを活用したい社員がBYODを届け出る申請方式に切り替えた。コストは全社導入よりも月額700万円削減できたという。
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 第1期は業態拡大期に当たる2000年代後半から2012年まで。オフィスは東京都渋谷区の初台にあり、電話システムは自営のPBXで卓上ビジネスフォンを1人1台用意するという旧来型のオフィス環境だった。一方、メールなど業務で使う情報系アプリをBYODで利用する方式を導入し、モバイル環境の整備にも着手した。

スマホを業務活用したい社員が申請する

 2012年から2014年の第2期では、渋谷駅のそばに2012年に竣工した商業ビル「渋谷ヒカリエ」への移転に伴い、電話とスマホの業務活用を全面的に見直した。正社員にスマホを支給して、内線電話から情報共有まで多くの機能を集約する方向性を打ち出したのだ。

 会社支給のスマホにはKDDIのFMCサービスを導入、1台ごとに0AB~Jの固定番号と内線番号を付与した。MDMも導入し、メールなど業務用の情報系アプリの管理や紛失時にデータを消去できるセキュリティ機能も導入した。一方で、卓上のビジネスフォンは台数を削減し、4人分の机を隣接させた「島」に1台の割合で設置する構成に切り替えた。島の卓上ビジネスフォンとスマホは内線番号で通話可能とし、転送もできるようにした。

 しかし実際に運用を進めると課題が浮かび上がってきた。内線電話も含めて、ほとんど活用していない社員もいるなど活用度がばらついた。会社用と個人用のスマホ2台持ちを煩わしく感じる社員もいたという。この状況を踏まえ、スマホの会社支給は2年で見直された。「スマホの業務活用は足並みをそろえるより、使いたい人だけが使うことが理想的。余剰コストの削減にもなる」と宮本マネージャーは理由を説明する。

 そこで第3期に導入したのが申請ベースのBYODだ。まず内線通話は契約サービスを切り替え、クラウドPBXからのコールバック方式を導入した。スマホから電話帳アプリを介して発信すると、発信相手にはPBXに登録された0AB~J番号や内線番号から発信される。個人のスマホにもPBXから発信するため、通話料はすべて会社負担になる。紛失時のセキュリティ対応は、導入するアプリの工夫やMDMの機能向上で解決できた。MDMには業務データを持つアプリなどを選択的に消去できる機能が新たに搭載されたからだ。

 BYODの導入で携帯電話の法人契約は大幅に減り、通信料の支払いは月額で700万円を削減できた。一方で社員の評価は「スマホの2台持ちから解放された、業務専用の電話帳アプリなどで公私を区別しやすい、など概ね好評だ」と宮本マネージャーは評価する。

BYOD▼
Bring Your Own Devices。
MDM▼
モバイルデバイス管理。
電話帳アプリを介して▼
端末にデータを残さないクラウド型電話帳サービス「Phone Appli Collaboration Directory」を使った。

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