今回は、筆者が「Amazon Aurora」(Aurora)を実際に導入/運用した経験から、Aurora活用による利点や移行時に注意したいポイントを解説する。まず筆者が所属するSocketの主力サービス「Flipdesk」をAuroraに移行した経緯と、移行の効果について紹介する。

 Flipdeskは、「Web接客プラットフォーム」と呼ばれるWebサイト向けのサービスである。Webサイトの運営者がサイト内に専用のタグを埋め込めば、そのサイトを利用するエンドユーザーに対して、様々な“接客”を提供できる。EC(電子商取引)サイトでの利用が代表例で、エンドユーザーが商品選びで迷っていることを察して案内を提示したり、スタッフとのチャット画面を表示したりすることが可能だ(図1)。

図1●Webサイトのユーザーを“接客”するFlipdesk
図1●Webサイトのユーザーを“接客”するFlipdesk
出所:Socket
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 こうしたサービスを提供するには、Webサイトの利用状況に関するデータを細かく収集し、素早く分析する必要がある。2016年9月現在、Flipdeskは1カ月に総計で数十億件以上のデータを扱っている。これらをリアルタイムに処理するために、API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)には数百ミリ秒以下という応答速度が求められる。

 サービス開始当初、動作環境には米セールス・フォース・ドットコムのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)「Heroku」を用いていた。データベースには、他のクラウドベンダー上で「MySQL」を利用していた。サービスの規模拡大に伴って、プラットフォームをAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)に変更し、「Amazon RDS for MySQL」で1台のデータベースインスタンスを稼働させた。その後、リードレプリカ構成を使用するようシステムを改修。RDS for MySQLのスケールアップ(インスタンス単体の性能向上)と、スケールアウト(インスタンス数の追加)で処理性能を確保してきた。

レプリカラグが致命的な問題に

 だが、その過程でいくつかの課題に直面した。その一つが、リードレプリカの同期遅延(レプリカラグ)である。

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