ブロックチェーンはインターネット革命に匹敵する破壊的な技術ともてはやされる一方、技術の成熟度はまだ黎明期にある。顕著な例が2016年6月18日に起こったブロックチェーン技術を利用した事業投資ファンド「The DAO」への攻撃だ。プログラムコードの脆弱性を突かれ、仮想通貨が流出した。
ここでは第一人者である松尾真一郎氏にブロックチェーンの課題を四つの問題提起という形で端的にまとめてもらった(編集部)。
【課題1】暗号技術の安全性の検証
現状のブロックチェーンには、暗号技術の安全性の検証にまず課題がある。特に外部専門家による検証が不十分である(図11)。
ビットコインのような、暗号技術と通信を組み合わせて新たな応用を実現する技術「暗号プロトコル」では通常、達成したいセキュリティ要件を定義し、そのセキュリティ要件を満たすように設計する。その設計が、正しくセキュリティ要件を満たしているかは数理的な手法で検証する。
だがビットコインやブロックチェーンでは定式化された安全性の定義がまだない。結果として数理的な安全性検証も不十分だ。また実装の安全性を確保する手段も検証が十分ではない。