ITproマーケティングが開催した「BtoBセールス&マーケティングSummit 2016 Autumn」で、東京商工リサーチ(TSR) 事業本部 マーケティング部 部長 弓削 正範氏は、より効率的な営業活動を実現するマーケティング手法について説明した。「企業情報によるターゲティングで効果を最大化するアカウント・ベースド・マーケティング(ABM)の実践」と題した講演で、自社での実践例を踏まえたABMを成功に導くヒントと成果についても言及した。

ABM実施の前提となるマッチング作業の重要性

東京商工リサーチ 事業本部 マーケティング部 部長 弓削 正範氏
東京商工リサーチ 事業本部 マーケティング部 部長 弓削 正範氏
(撮影:都築雅人)
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 ABM(Account Based Marketing)とは、どのような手法か。弓削氏は講演の冒頭で、東京商工リサーチ(TSR)が考えるABMについて「自社の顧客の中から優良顧客企業を定義し、同様の特徴・特性を持つ『ポテンシャルアカウント』をターゲットとして、集中して営業プロモーションを行うこと」と述べた。

 その実践のためには、「まず企業を一意に特定する必要がある」(弓削氏)。しかし、実際にはSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)、ERP(統合基幹業務システム)などの社内データベースの情報が、企業を特定するマスターデータと適切にひも付けられていなケースが多い。

 例えば「XYZ」という名前の会社が、SFAでは「株式会社XYZ」、CRMでは「エックス・ワイ・ゼット」、ERPでは「XYZ首都圏営業部」などと登録されてしまっている場合だ。そこで「名寄せ(マッチング)」作業が重要となる。

 名寄せによってマスターデータ上で企業を一意に特定し、売り上げデータとひも付けることで、優良顧客企業を特定する準備が整う。優良顧客企業の特定にはさまざまな方法があるが、「TSRが主に使う分析手法は二つある」(弓削氏)という。

 その一つが、顧客を購入金額の多いものから並べて十等分し、各層が購入金額全体に対しどの程度を占めるのかを測っていく「デシル分析」だ。

 もう一つは、比較的少額ではあるが何回も繰り返し購入されている製品・サービスの分析に使われる「RFM分析」。デシル分析が購入金額だけに着目しているのに対し、最新購入(Recency)、購入頻度(Frequency)、購入金額(Monetary)の三つを分析軸として持つ手法である。TSRではインターネットで企業情報を提供するサービスの分析などで活用している。

優良顧客の属性把握は「企業情報プロファイリング」で

 弓削氏によれば、「企業名のマッチングを実施し、自社の取引データを付与することによって初めて、優良顧客の特定作業に入れるようになる」という。もちろん企業名だけではどのような特徴を持つのかは分からない。そこで重要になってくるのがプロファイル(顧客属性情報)である。

 顧客が個人であるBtoC(Business to Consumer)と異なり、BtoB(Business to Business)のプロファイルでは、業種・売上高・従業員数・法人格といった企業情報が重要になる。さらに顧客企業には、商品購入やサービス導入に当たって決定権を持つキーパーソンがいる。

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