ITproマーケティングが開催した「BtoBセールス&マーケティングSummit 2016 Autumn」で、元GEヘルスケア グローバル本社 ライフサイエンス チーフ デジタルマーケティングエバンジェリスト、グローバルリーダー 飯室 淳史氏は、営業プロセスをデジタル化する際に起こりうる問題と解決へのアプローチについて解説した。飯室氏は「営業から始めるデジタル変革の勘所」と題した講演で、営業とマーケティングの統括責任者として取り組んだ経験をよりどころとしながら、「顧客企業での生涯顧客価値の最大化という目標を共有し、それを実現する戦略を作ることが重要。その一環としてデジタル変革を捉えるべき」と力説した。
デジタル変革は「顧客ニーズに応える」ためのもの
「今、デジタルを駆使しないメーカーを顧客企業は利用しようとしない。デジタル変革は、顧客のニーズに応えるためのものである」と飯室氏は切り出した。かつて企業間取引(BtoB)では「メールよりも電話」「注文は電話やファックス」が主流だった。しかし今は状況が違うと飯室氏は指摘する。
「新たな取引先をWebで探そうという顧客企業にとっては、メーカーがWebサイトを持っていないあるいは貧弱であるのは、存在していないのも同じだ」と現在のビジネスの厳しさを訴えた。
さらに「メールで連絡ができない営業担当者には仕事を依頼しない、電話やファックスでしか注文を受け付けない企業は相手にされないというケースも増えている」と続けた。
その要因の一つに、飯室氏は一般消費者向けのコンシューマ市場(BtoC)でデジタル変革が先行している点を挙げた。一般向けのネット通販では、Webで在庫の有無が確認でき、問い合わせは24時間いつでも受け付けているのが当たり前だ。
「その利便性とレスポンスがBtoBでも求められている。もはや、なぜ自社がデジタル変革をするのかについて議論するような時代ではない。顧客の要望に応えなければ、仕事はもらえない。だからデジタル変革をせざるをえない」と飯室氏は主張する。
一方的なデジタル変革は、営業現場からの反発に遭う
飯室氏は、「デジタル変革に取り組もうとしても、現場の営業スタッフが抵抗を示す場合がある」と自らの経験を紹介した。
GEヘルスケアでは営業現場から、「新しいデジタルツールに切り替えたとしても、受注や売り上げが増えるとは限らない」といった反対の声が上がってきた。例えば、スマートフォンを営業に貸与したところ、バッテリーが持たないからと突き返されたこともあるという。
飯室氏は「スマートフォン導入というデジタル変革の第一歩は、現場からの反発でつまづいてしまった。このようにデジタル化を推進する前に、営業の現場には解決しなくてはいけない課題が山積みとなる」と語る。
それらの経験から飯室氏は「ITベンダーはSFA(営業支援システム)を導入すれば、営業プロセスを見える化して案件を管理できるというが、営業部門にはSFAを使わなくても営業活動はできていたという認識がある」という思考のギャップを指摘。「デジタルツールの導入でデジタル変革が進むという思い込みを持って進めると、失敗につながる」と訴えた。