「ソフトウエアでネットワークの構成や設定を変更する」。それを可能にする技術がSDN▼だ。
SDNは、主に大規模データセンター向けの技術だと思われていた。ところが今、企業LANへの導入が急増している。データセンターへの導入時とは別のメリットが注目されて企業LANへの導入が進んでいるのだ。
まずSDNがどういった技術か、どんなメリットがあるのかを見ていこう。
制御部をハードウエアと分離
従来のネットワーク機器は、データ転送を行うハードウエアとそれを制御するソフトウエアが同じ機器の中に一体で組み込まれていた(図1-1左)。このため、設定を機器ごとに行う必要があった。制御を行うソフトウエアを「コントロールプレーン」(制御部)、データ転送を行うハードウエアを「データプレーン」(データ転送部)と呼ぶ。
これに対しSDNではコントロールプレーンとデータプレーンを明確に分離する(図1-1右)。制御を行うソフトウエアが「SDNコントローラー」だ。通常はサーバーにインストールして使用する。コントローラーが動作するアプライアンス▼製品もある。
一方、SDNにおけるスイッチは、データプレーンのデータ転送機能だけを持ち、コントローラーから制御する▼。一つのコントローラーから複数のスイッチを制御することも可能だ。これにより、ネットワークを集中管理できる。
従来のネットワークは、レイヤー2(L2)スイッチやレイヤー3(L3)スイッチなどのネットワーク機器を組み合わせた階層構造を採っている。このため、ネットワーク機器を追加/撤去するときは、配線をつなぎ替えたり多くの個々の機器に対して設定変更を施したりする必要がある。
SDNを利用すれば、コントローラーでネットワーク全体の構成や設定を変更できる。各ポートに割り当てた設定をコマンド一つで入れ替えたり差し替えたりも可能だ。インターネットアクセスやIP電話、ビデオ会議といったアプリケーションの違いを判断して、ネットワーク経路の変更や回線種別の切り替え、帯域制御などを自動的に行うといった柔軟な運用を実現する。
Software-Defined Networkingの略。
特定のソフトウエアを利用できるように、ハードウエアに組み込んだ形で提供される専用機器。
コントローラーでどのようにスイッチを制御するかはPart2で詳しく説明する。